文房具56話 串田孫一 ちくま文庫

昨日、もう一冊文房具の本を買いました。

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文房具56話 串田孫一 ちくま文庫

串田孫一さんは、大学の先生で、随筆家・詩人・哲学者らしいです。アマゾンでどんな本を書いたのか調べてみたら、「山のパンセ」がありました。これはどこかで聞いたことがあります。

この本の元は、月刊事務用品という月刊誌に1970年1月号から1973年12月号まで連載されたもののようです。単行本として発行されたのが1978年とあります。わたしは月刊誌が刊行されている途中で生まれました。

目次を見ると、帳面、ペン先、消しゴム、ぶんまわし、インキ、万年筆、糊、白墨・・・・と続きます。ちょうど糊のところまで読みました。「ぶんまわし」というのはコンパスのことです。本文を読めばわかりますが漢字で書くと「分廻し」となります。なるほどそう書けばなんとなくコンパスのような気がしてきますね。

例えば、糊のところを読むとヤマト糊のことが書いてあります。わたしはどこかで読んで知っていましたが、ヤマト糊のヤマトって、大和じゃなくて、矢(や)的(まと)のことなんですね。知ってましたか?

「ヤマト糊は、容器は変わったが、今でもなかなか便利である。小学校の頃には青い硝子の容器で、蓋はブリキで、そこに矢と的がついていた。しばらく使わずにいると、罅割れたり、黴がはえたり、蓋の裏側には錆がぶつぶつに出来た。」

こんな感じで書いてあります。「ヤマト糊のヤマトは大和じゃなくて、矢的だよ」なんてストレートには書いてありません。

内容的にはずいぶん古いと感じるのですが、ちょうど生まれたころに書かれたということもあり、なんとなく当時の雰囲気をうかがい知る感じはあります。とはいえ、作者は1915年生まれなので、書かれている内容はもう少しさかのぼった時代のことなのかもしれません。ただ、少なくとも1970年当初に読んでも違和感のない内容であったのは間違いないと思います。

もうひとつ「萬年筆」から少し抜粋します。

「ところがあまり使う度数の少なくない人ほど、書き味、インキの出方を気にして、どんどん買うように思える。それとデザインが新しくなればそれがまた欲しくなる。これは萬年筆に限らず、一般現象であって、それですべて商売も成り立っているのだろう。」

この辺の事情は今も似たり寄ったりですね。耳に痛いです。汗

この本は読みやすくて、とにかくおもしろい。文房具にまつわる個人的なエピソードだけでなく、ちょっとした豆知識も随所に書いてあります。文房具に関するこんな文章が読みたかった。文房具好きなら、きっとおもしろさがわかるはず。

文房具56話 (ちくま文庫)

文房具56話 (ちくま文庫)

  • 作者:串田 孫一
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2001/01/01
  • メディア: 文庫
 

 

ザ・ペンシル・パーフェクト

2019年12月17日に「ザ・ペンシル・パーフェクト」という本が発行されました。

www.buntobi.com

著者のキャロライン・ウィーヴァーさんは、子供のころから鉛筆が好きで、2015年ニューヨークシティに世界中から集めた木軸鉛筆の専門店を開店しました。

ちょっと高い本(税抜き3000円)なので、少し中を見てから買いたかったので、ネットでは注文しませんでした。今日、紀伊国屋に行ったら一冊置いてありました。ぺらぺらとめくり、即購入を決めました。

まず、本がでかいです。

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写真からは大きさが伝わりにくいと思うので、あえて縮小しないで載せました。B5判です。いわゆる大学ノートくらいねと思えばいいのですが、この本は本当のB5判なので、大学ノートよりも縦横に1センチくらいずつ大きいです。なぜならほとんどの大学ノートはB5はB5でも、セミB5というサイズだからです。

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まだぺらぺらめくっただけなので、詳細な内容まではわかりませんが、黒鉛の発見に始まる鉛筆の歴史を中心として、作り方や消しゴム、鉛筆削りなどについても詳しく書いてあります。最後の方にHow to start Pencil Collectionなんて章があったりします。

例えば、画家から熱気球技師に転向したニコラ=ジャック・コンテ(1755-1805)は実験中に片目を負傷してから、鉛筆に興味を持ち、水と粘土を使って高品質な鉛筆の芯を作ったそうです。絵コンテのコンテってのはここから来てるらしいです。また、高品質な芯を作れと命じたのはカルノーという人だと書いてあるのですが、これって、時代的に見てカルノーサイクルのカルノーでしょうね。こんなことが山ほど書いてあります。

文房具好きなら一読の価値があると思います。

訂正

文房具語辞典によると、カルノーは、カルノーサイクルのカルノーさんじゃ、ないみたいですね。

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ザ・ペンシル・パーフェクト: 文化の象徴“鉛筆”の知られざる物語

ザ・ペンシル・パーフェクト: 文化の象徴“鉛筆”の知られざる物語

 

 

クリアレーダー、モノタフ

モノタフを買いに行ったら、クリアレーダーもあったので、ふたつとも買ってきました。

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結構透明です。

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モノタフはなんとなくKEEPっぽいデザイン。

消しゴムにそれほどこだわりがあるわけではないのですが、自宅にあるブロックタイプの消しゴムをかき集めてみたらこれだけありました。これにスティックタイプがふたつ、会社にダブルエアーインとレーダーがあります。

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モノタフのスリーブは切り取り線があります。また、折れるのを防止するために、四つ角が丸めてあり、斜めにカットされています。斜めにカットしている理由はこういうことだと思います。

下の写真を見てください。

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右手でこのように持って消そうとするとこのようになります。この状態で紙を前後にこすると、カットしてある部分が大きく変形することで、局所にかかる応力を分散する作用があります。ちなみに、左手で消すとこの効果は得られません。

実際に消してみましょう。

下の写真はグルグルの部分を3回ほど軽く擦った状態です。

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画像を見るとわかりますが、クリアレーダーは最初ちょっと筆跡が広がるような傾向があります。消えが悪いわけではありませんが、擦る回数がちょっと多い感じがします。印象としては、ファーストタッチで芯が広がっているイメージです。2,3回擦って、摩擦熱が発生し、消しカスが発生するくらいになるとよく消えるようになります。消えないというより、ちょっと普通の消しゴムと消え方が違います。

モノタフは普通によく消えます。

今どきの消しゴムは「消す」という点に関して、ダメだなぁと感じることはほとんどありません。ただ、消し心地や消しカスの状態などには結構違いがあります。

わたしの消しゴムの使い方ですが、強く押し付けて消すというよりも、どちらかというと軽く当てて前後に小さく動かすような消し方が多いです。サラサラっとした消し心地が好きです。ダブルエアインは脆いと感じることがありますが、消しゴムが折れるとか欠けるということはあまり起きないです。消しカスに関しては程よくまとまるといいですね。今手持ちの消しゴムで一番好きなのはリサーレです。次に好きなのはモノエアータッチです。モノエアータッチは消し心地は最高ですが、消しカスが細かすぎますね。

今回購入したモノタフはリサーレを超えるほどのことはないかなぁという感じなのですが、モノエアータッチといい勝負です。消し心地はモノエアータッチが少し良くて、消しカスの状態はモノタフって感じです。ただ、消しゴムとしてすごく素直な挙動で好感が持てます。また、硬いので小さなところを細かく消すのにも向いているような気がします。クリアレーダーは、実用的な道具としては特筆すべき点はないと思いますが、こういう文房具が机の上に転がっていると楽しい気持ちになると思います。消えないってことはないので、見た目が好きな人は手にしてみるのもいいかもしれません。

 

 

 

 

数学の問題を解くときのシャープペンシルの芯は0.5のHBが無難

大学のころに初めて0.9, 0.7のスマッシュを使ったときに、気に入って、ずっと太い芯のシャープペンシルを使い続けていました。今でも好んで太いシャープペンシルは使っています。

年末、出張で大学に行ったとき、暇つぶしに生協の本のコーナーを見ていたら、おもしろそうな本を見つけました。

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わたしはこの本のことは知りませんでしたが、評判のわりに入手困難になっていたらしいです。しかし、2019年の5月に復刊たようです。

ぺらぺらと立ち読みしているうちに、問題を解きたくなって、とりあえず第一巻を買いました。正月休みくらいから本格的に読み始め、今、2巻の終わりくらいです。演習問題は全部解いています。第3巻も入手済みです。やりだすとクイズ感覚で楽しくて、毎晩少しずつ進めています。数学としても新たな発見があります。

問題はこんな感じで解いています。

紙は真ん中にプリンターで線を入れたコピー用紙。

シャープペンシルは気分によって変えています。久しぶりに集中して問題を解いていたら、芯は0.5のHBかなという気がしてきました。

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シャープペンシルは剛性の高いものが好ましく、今、使用頻度が高いのはrotring600とスマッシュです。シャープペンシルに関しては気分によって使いたいものが変わるので、これでなければいけないというのはないです。

HBはノートなどに使うとちょっと薄いと感じることもあります。快適に使うコツは下敷きを必ず使うことです。紙を固くすることで、接触圧力を高め、筆跡を濃くする効果が期待できます。HBだと芯の減りも少ないので、ノックの回数も減ります。それほど多く書かないなら0.3や0.4もいいのですが、長時間書き続ける場合には、0.5のHBが個人的にはベストでした。

芯の銘柄はそんなにこだわりはないのですが、ぺんてるのAin STEINとかuniのHi-uniなどが比較的硬くて好きです。

ちなみに、ちょっと取っておきたいなと思った紙はiPhoneでスキャンして、noteに貼り付けています。

https://note.com/digistill

 

ぺんてる シャープペン芯 アイン シュタイン HB XC275HB-3P 3個パック
 

 

 

 

文房具語辞典

予約していた文房具語辞典が届きました。

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この本は文具王こと高畑正幸さんの文具王20周年を記念する渾身の新刊です。

下の動画は本人による本の紹介動画です。


「ファイル」と「バインダー」って何が違うの?【文具王の文房具語辞典】【文具のとびら】#139 #豆知識

文房具好きなら買って損はしないと思います。

わたしはまず見出し語の選択に興味を持ちました。今はネットで調べれば大抵のことは調べることができます。ただ、「知らない言葉は調べようがない」という問題があります。紙の辞書のいいところは、自分の中にない言葉にたくさん出会えることだと思います。用語の選定基準はよくわかりませんが、文房具王が重要と思われる言葉を羅列してあることは間違いありません。見出し語を見るだけでも興味深いです。

下の写真は今、わたしの机の横に貼ってあるイラストです。以前、何かを見ながら模写したものです。

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特に暗記しようとかそういうわけではないんですが、時々眺めたりします。また、ブログに使う用語を統一するためにも時々使っています。微妙にアスペクト比が変なので書き直したいと思っているんですが、概略はわかるからいいかと妥協しています。

わたしはこういう機構の内部構造や車やカメラ、文房具などの「形」を見るのがすごく好きなんです。車の場合、それがすごく好きとかそういうわけではないのですが、形が好きなんですね。

話は逸れますが、わたしは高分子化学が専門なのですが、形や機構を考えたりするのが好きです。発想はだいたいビジュアルで浮かびます。

それはさておき、こういう観点からもこの本は興味深いです。つまり、いい感じのイラストがたくさんあります。

また、資料類も充実していて、文房具好きなら一度目を通しておいて損はないと思います。

文房具語辞典: 文房具にまつわる言葉をイラストと豆知識でカリカリと読み解く

文房具語辞典: 文房具にまつわる言葉をイラストと豆知識でカリカリと読み解く

  • 作者:高畑 正幸
  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2020/01/14
  • メディア: 単行本
 

 

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