オレンズの真価

また、オレンズか!と思われてもいいのだ。

オレンズの真価は折れないメカニズムではなくて、芯の繰り出し機構にあると思う。パイプがスライドして折れないなんてことは回転モーメントから考えれば誰でもすぐに思いつく。あとはある程度の工作精度の問題だ。芯がある程度飛び出すことを前提にパイプがスライドするなんてシャーペンでいいなら、それほど作るのも難しくないだろう。

細い芯が折れず、芯を出さない状態で気持ちよく書くためには、ワンノックで口金が目いっぱいに伸び、なおかつその先端まで芯が充填された状態でチャックで芯が固定されることだ。先ほども書いたように、オレンズは適度に芯が減れば途中でノックしても口金が目いっぱいに伸び、芯が先まで充填される。この挙動が不思議なのだ。

このような挙動は通常のシャーペンのようにワンノックで所定量の芯が繰り出されるようなチャック機構では達成できない。

試しにスライドパイプを外して、口金だけにしてノックしてみた。すると、軸に入った芯が全てスルスルと出てきた。通常のシャープペンシルは口金先端に穴の開いた樹脂材料(ストッパ)が設置してあり、芯が滑り出さないようにブレーキをかける役目を果たしている。チャックが芯を離すタイミングで芯がストッパでぴったり止まれば繰り出し量が決まる。しかし、オレンズにはこの樹脂ストッパが存在せず、スライドパイプがそれと類似の役割を果たしていると思われる。

続いて、ノーマル状態で芯を充填し、ペンをさかさまにしてノックしてみる。ノックすると芯はフリー状態になるのでそもそも芯は出てこない。これは先ほどの観察から推測できる。この時、ノックと共にパイプがせり出すが、ノックを戻すとパイプは戻る。

続いて、通常状態でノックを繰り返し、ある程度芯が飛び出た状態にして、引き続き、ペンを逆さまにして、ノックを続ける。すると芯は伸びないものの、落ちていかない。つまり、芯とパイプの間には摩擦力が発生しているのだ。

しかも、摩擦力が強いのは先端部分ではないかと思われるのだ。つまり、パイプの先端部分は少し狭くなっているのではないか。そうすると説明がうまくいく。

つまりこうだ。

ノックすると、チャック部分がせり出し、スライドパイプユニットを所定の位置まで押し出す。引き続き(というか同時に)、重力で芯が下りてくる。芯は無限に伸びるのではなく、ある程度きつくなると止まる。そのきつくなるポイントは先端に限りなく近い部分というわけだ。その証拠に、口金が内部に入った状態からワンノックして書こうとすると、わずかに口金が無駄に動く。つまり芯がパイプの先端まで降りてこず、パイプ先端に若干芯が充填されていない部分があるのだ。この量には個体差があるものと思われる。

書いた自分しかわかってない可能性が高いけど、たぶん、メカニズムはこういうことだと思う。このパイプ、どうやって加工してるんだろう・・・。若干先端を絞ってるはずなんだよなぁ。テーパーのついた穴を開けた冶具に所定荷重で押し当てたりしてるのかな。

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