生物と無生物のあいだという本を読んだ。福岡伸一氏は第一線の生物学者なのだが、文章がうまい。この本は専門書ではないので、必要以上に専門的な記述をしていないのは当たり前なのだが、科学者が素人向けに控えめに書きましたというレベルの本ではない。非常に優れたノンフィクションとして読み応えがある。
科学的な大発見とはいかにして生まれるのか、それにまつわる泥臭いエピソードにも触れつつ、自然の偉大さに触れることができると思う。フェルマーの最終定理を読んだときのような興奮を味わえた。
金曜日に話を聞いた山中伸弥氏の場合、iPS細胞という万能細胞を使って生命を自由に操ろうとしているが、福岡氏は自然に跪き、生命のありようをただ記述するしかないという立場を採っているようだ。先日の夕学講座の質問者から又聞きしたことなので正確な発言ではないかもしれないが、夕学講座で福岡氏はiPS細胞やES細胞のことを、やってはいけないことをやったこともあったと反省する日が来ると言っていたようである。
同じ生物学の最前線に立つ人でも、スタンス一つで考え方が全く違ってくるものなのだなと思った。
おそらく根本的に福岡氏は生物の真理を目指すサイエンティストであり、山中氏は生物学を利用する医者なのだと思う。
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