硬くて強いのに割れる?

動画:iPhone 4を落とすと壊れる

プラスチックの20倍の剛性、30倍の硬度

この物性が割れるとか割れないということに対して与える情報はあまりないんじゃないだろうか。割れないことだけが大切ならば、剛性とか硬度なんて全く必要ない。つまり、こんにゃくが割れますか?ってことだ。
アップルの基調講演でもあったように、このガラスは非常にしなるガラスである。下の記事のデータを見ても、ガラスの中でも比較的剛性のない部類のガラスなのである。むしろ、破壊までの変形率が大きいことを強調するべきだと思う。
そもそもモノが割れるということを考える場合、材料に生じるクラックがいかに大きく伝搬しないかがという点が大切だと思う。例えば、アモルファスが強いのは材料に結晶構造が存在しないため、格子欠陥等、弱い構造がないことに起因する。コーニング社のゴリラガラスのブローチャを見ると、ゴリラガラスは化学的に表面が強化されているため、クラックが深く成長しないことを強調している。しかし、これも程度もので、大きな力が加わると材料が破壊するのはあたりまえだ。
Product Information Sheetを参照すると、例えば厚み0.7 mmのソーダガラスとゴリラガラスの破壊する荷重はそれぞれ約10kgfと85kgfだ。つまり、その条件において、ざっくり8倍程の耐荷重能を持っている。グググッと押し付け荷重がかかった場合には8倍以上の強さを発揮するということを言っているわけだ。
衝撃的な力を加えた場合でも、ある程度の強度を発揮するのではないかと期待はできるが、何をやっても割れないなんてことはあり得ないと思うのだ。
落としても割れないのが理想的ではある。ゴリラガラスは非常に優れたガラスではあると思うが、何をやっても破壊しないそんな夢のような材料ではないと思う。
ただ、どの程度で壊れるのかを実際の製品で知っておくことは使う上での参考にはなるだろう。むしろ、やっぱりガラスなので打ち所が悪いと割れることがあるんだねってことを知る方がよいのではないだろうか。
大切なのはデータはできるだけ正しく解釈しなければならないし、実験結果も慎重に取り扱わなければならないと思うのだ。
「たたきつけたら割れたぞ、バーカ、バーカ」
これじゃ、こどものけんかと一緒だ。なので、リンク先の動画を見て、短絡的にiPhone4は欠陥品ですなというのは早計過ぎると思う。なぜなら、ガラスだからこそのメリットも多いと思うからだ。ただ割れないことだけが大切ならば、もっと別の選択肢があるだろう。
もちろん、更なる設計の向上により、ガラスに衝撃が伝わりにくい設計にして欲しいとは思う。
なにごともバランス感覚が大切。極端な思考は現実を見誤ることが多い気がする。

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