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ナンバーテンブルース さらばサイゴン

散歩の帰りにサロンシネマの前を通りかかったので、おもしろい映画はないかと覗いてみた。「ナンバーテンブルース」という映画をやっていて、ちょうど長田紀生監督のトークショーがあるという。開演は10分後。なにか運命のようなものを感じたので、映画館に飛び込んだ。

この映画はベトナム戦争のまっただ中に、現地で撮影されたエンターテイメント映画だ。反戦や平和を直接的に謳う映画ではない。

フィルムは一旦お蔵入りになり、監督ですらフィルムの行方がわからなくなっていたのだという。そんな中、国立フィルムセンターでフィルムが見つかった。ほとんどのフィルムはボロボロでとても作品にできるようなクオリティではなかったという。しかし、その中にもクオリティを保っているものもあり、また、最新のデジタル技術を駆使して、映画を完成させたのだという。37年の月日を経た今、この映画を上映するべきかどうか監督は迷ったそうだが、周りの後押しもあり、上映に踏み切ったのだという。


ナンバーテンブルース さらばサイゴン【予告編】2014年4月26 日(土)テアトル新宿にてロード ...

上映前後に監督のトークショーがあり、裏話や映画にかける思いを存分に聞くことができた。

1の質問から10の答えが返ってくる程の饒舌な方で、話に深みを感じることのできる人だった。

その中のひとつのエピソード。

この映画には磯村健治という俳優が出演している。劇団「雲」「文学座」を経て同期の松田優作と「6月劇場」に移籍した。この映画の撮影の出発前日に監督や出演者が新宿で飲んでいたところ、たまたま松田優作と出会った。松田優作は長田監督に「磯村をよろしく頼みます」と言ったのだという。

当時ベトナムで撮影をした時の苦労した話をしてくださいという質問には、苦労を玄人感じるほどの余裕はなく、とにかく一生懸命だったということだ。銃撃戦の音は日夜を問わず聞こえてくるが、そんなことも1週間もすれば日常生活の一部になってしまう。意外だったのは、そんなベトナム生活を半年ほど続けた後、平和な東京に帰ってきた時に、例えようのない違和感のようなものを感じたのだという。ベトナムには1週間で慣れたが、東京には1ヶ月以上慣れることはなかった、それはなぜなのかの答えは今ここでは答えないことにしましょうという意味深な宿題を残された。

この映画は商社で働くひとりの日本人サラリーマンがひょんなことからトラブルに巻き込まれるところからストーリーが動いていく。映画の冒頭でベトナム人の子供から「日本人はナンバーワンだね!」と言われ、主人公が有頂天になるシーンがあるのだが、映画の題目は「ナンバーテンブルース」。「ナンバーテン」というのは当時ベトナム付近ではやっていた言葉で、ナンバーワンの反対の意味、つまり、「最低」という意味の言葉だという。ナンバーワンの杉本(川津祐介)がどんどんと落ちてナンバーテンに近づいていく。当時高度経済成長を遂げた日本、ナンバーワンと言われ浮かれる日本人を、主人公の杉本に照らし合わせ、痛烈に批判しているように感じた。

トークショー終了後、パンフレットに監督のサインをもらった。

サインペンがかすれ、何度か書き直したので変になったサインだったが、それもまたおもしろいと思い、そのままにしてもらった。

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