ぺんてる GRAPHGEAR1000の中を観察してみたら設計者のこだわりが明確に伝わってきた

( 今回のブログはちょっと説明が雑なため、現物が手もとにないとちょっとわかりにくいと思います。)

グラフギア1000はペン先を収納することができる製図用のシャープペンシルです。構造上、シャープユニットと口金が衝突してカチャカチャと音がしそうなものですが、ほぼその違和感はありません。相当精密に口金を作り込んでいるに違いないと思いきや、シャープユニットの先端をつまんで動かすとそれなりに隙間があることが感じられます。(決して精度自体は低いわけではないです)

中がどうなっているのかちょっと観察してみました。

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シャープユニットを筒に入れ、黒い樹脂をねじ込むとき、黒い樹脂部品がバネの端面に当たります。ねじ込む前からテンションが掛かっていますので、ねじ込むと結果的に結構な力でシャープユニットが軸の後端に押し付けられる形になります。この状態ですね。

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この状態ですでにシャープペンシルとして十分機能します。細いですが掴んで筆記すると普通に書けます。通常の筆圧程度ならグラグラもしません。

つまり、グリップと口金は「おまけ」というわけではないですが、添えられたような状態なんですね。カチャッという音は剛性のない棒状の何かが、筆記時の接触速度で口金に当たることにより発生する音です。グラフギア1000はシャープユニットが軸そのものに高い剛性で固定されているため、ほとんど動かないのだと思います。グラフギア1000はカチャッという音をさせるのは至難の業というか、どうやっても鳴らないです。

ところで、シャープユニットを収納するとき、芯は引っ込めておくべきでしょうか。

基本的には芯は収納したほうがいいでしょう。しかし、グラフギア1000はシャープユニットを収納すると、芯とチャックが緩みます。なぜそうなるか。一枚目の写真のシャープユニットを見てください。グレーの部品はさっきも言ったように、黒い樹脂でバネを介して軸後方に押されているため、軸の後ろ側に動こう動こうとしています。筆記時にはクリップで強制的に後方へ動く力をある場所で制限されます。その状態でノックすると、白い樹脂部品がグレーの樹脂部品に挿入され、結果的にノックされる仕組みです。

では、クリップの締結力を解除し、シャープユニットを収納するとどうなるか。グレーの樹脂部品はバネに押されるような形で白い樹脂にバネの反力で押し込められようとします。このバネ反力がノックの力よりも強いため、シャープユニットを収納すると結果的にノックされたような状態になってしまうんです。

ですから、下の写真のように過剰に芯を出した状態で、

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ペン先ユニットを収納すると、こうなります。

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この状態はすでにノックされるような力が掛かっています。

ですから、下の写真のように紙に押し当てるだけで、

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芯はスッと引っ込みます。

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この状態でおもむろにシャープユニットを繰り出すとこんな感じになります。

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ちょうど3ノック分、つまり、1.5ミリメートルほどが出ているのがわかります。

ぺんてるのシャープペンシルは、筆記時に2ノック(1ミリメートル)程度で筆記することが想定されています。

pentel.blog.jp

普通の感覚だと半分以下の0.5ミリメートル程にならないと新たにノックすることはないでしょう。仮に0.5ミリメートルの芯だし状態からワンノックすると+0.5ミリメートル足されるわけですからちょうど1ミリメートルになります(ぺんてるのシャープペンシルは1ノックできっちり0.5ミリの芯が繰り出されるように設計されています)。つまり、通常の使用状況においては芯をシャープユニットにわざわざ収納しなくてもペン先から芯が飛び出すことはありません。

しかも、上にリンクした「シャープペン博士のディープ講座 【Lesson 2】「シャープペンにメンテナンスがいらない理由」」を読むとわかるのですが、ノックしっぱなしの状態はチャックが開きっぱなしになった形であるため、チャックにテンションが掛かっておらず、チャックにとってはいい状態なんですね。逆に芯を咬ませていない状態だと、チャックを必要以上に中心に変形させようとするためチャックにとって負担がかかるということが書いてあります。ちなみに、チャックの構造は下のリンクを見てください。ちょうど筒を3分割にしてラッパが開いた状態がリリースされた状態です。

pentel.blog.jp

これを設計した人は相当こだわって設計してますね。グラフギア1000のこだわりにちょっと感動しました。

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ちょっと追記

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シャープユニットを収納しても厳密にはノックされるほどの力はないように思います。というのも、もし収納してノックされているなら、収納するだけで芯が出るはずです。しかし、芯が出ていることはありません。どういう状態になってるのかよくわかりません。

ぺんてる シャープペン グラフギア1000 PG1015 0.5mm

ぺんてる シャープペン グラフギア1000 PG1015 0.5mm

 

 

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