ケリーの50周年限定モデルが発売されるということで、ケリーを少し詳しく調べてみました。
まず、普通に分解できるところを分解してみました。
各部品の重量を調べてみます。
① 2.40 g
② 1.84 g
③ 4.68 g
④ 1.91 g
⑤ 2.77 g
⑥ 1.66 g
⑦ 5.15 g
⑧ 0.46 g
⑨ 0.30 g
合計: 21.17 g
ここで重心前と重心後の部品の重量をそれぞれ合計して比べてみましょう。
5番の部品は重心前後にわたり配置されるので無視します。
A: 重心前の部品は① + ② + ③ = 8.92 g
B: 重心後の部品は④ + ⑥ + ⑦ + ⑧ + ⑨ = 9.48 g
部品群Aと部品群Bの重量差は
B - A = 0.56 g
となります。
部品⑤の形状を見ると、チャックがあるので先端側が重めになっていることが推測されます。よって、部品群Aの重量がその分軽く設計されているのは合理的です。
そこでこの重量を簡単な仮定の下で補正してみましょう。
部品⑤の全長は94.6 mmでした。部品⑤の重心を調べるとチャック側から約32 mmでした。
重心より後のパイプ部分は62.6 mmということです。この左右に2.77 gが配置されているということです。つまり、重心よりも右と左にそれぞれ1.385 gが配置されているということです。
そこで右側の単位長さあたりの重量を計算してみると、0.022 g / mm(1.385 g / 62.6 mm)でした。この部分はほぼ均一なパイプ構造なので、この数値にパイプの長さを掛ければその部分の重量が求まります。
重量補正をするため、ペンの重心より後のパイプの長さを計測します。
ペンの重心より後ろにある部品⑤の長さは約41 mmでした。
62.6 - 41 = 21.6 mmが重心よりも先端側に多く配置されていることになります。これに先程求めた線密度を掛けてみます。
21.6 * 0.022 = 0.4752 g
この値は先程求めた部品群Aと部品群Bの差(B - A = 0.56 g)にほぼ一致していることがわかりました。
以上より、ペンの中心部を重心にするという設計思想が伺えます。このような重量バランスにするためには各部品の配置や重量をきっちりと設計する必要があります。設計者の美学を感じます。
実際の重心を調べてみました。
全長:131. 4 mm
重心:先端から約 65 mm
65 ÷ 131.4 ≒ 0.49なので、ちょうどペンの中心部付近に重心がありました。部品の重心配置より推測される結果と一致します。
全長が短いので普通のペンと比べるとペン先から重心の長さは短めですので、ある意味低重心と言えます。低重心かつ重心位置がペンの中心というのは全長が短いケリーだからこそなし得る重量バランスです。これがケリーの安定性の原因のひとつだと思います。
1ノックあたりの芯の繰出量は0.45 mmでした(20ノックで約 9 mm)。ぺんてるの0.5 mmの製図用シャープペンシルの1ノックあたりの芯の繰出量は0.5 mmなので、1割ほど繰出量が少ないです。