本通りの多山文具で開催中のペンクリニックに行ってきました。出張帰りだったので、ほとんど終了間際でした。ちょうど片付けを始めた時だったのですが、快く応じてくれました。今日は間に合わないと思って、行く予定ではなかったので、手持ちの万年筆がサファリだけでした。特に不満はないペンなのですが、書き出しが少しスムーズじゃないと言われ、少し調整してもらいました。
10分ほど雑談をさせてもらう中でいくつか発見がありました。
以下、D:自分、T:土田氏
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D「パイロットのカスタム74を持っているのですが、正直、あまり好きじゃなかったんですよ。書き出し時に筆圧がいる感じで・・・」
T「そうならないようにするにはペン先を少し開いてあげるといいんですが、そうすると、線の終わりがボテッとしたような感じになるんです。パイロットの万年筆は、はねや払いの時に線が細くなり、毛筆で書いたようなメリハリをつけるために、標準ではペン先を少し絞っているんです」
D「そういう話をどこかで聞いたことがあるんですが、やはりそういうことなんですね。」
T「もちろん、調整すれば筆圧なしで書き出しからインクがたくさん出るようにすることは難しくありませんよ」
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D「Mくらいの線幅で、なんかおすすめの万年筆はないですか」
T「そうですね、細さにこだわりがないなら・・・、ちょっと座ってみてください」
そこでおもむろに万年筆がずらりと並んだペンケースを机に広げました。
T「これ、ちょっと試してみてください」
D「これは、カスタム74・・」
T「742のウェーバリーです」
D「上に反ったようなペン先のやつですね。あまりグニャグニャしたニブは好きじゃないんですが」
書いてみると、中字か中細くらいの太さで、非常に滑らかに書けました。そして、全然グニャグニャはしておらず、しっかりと腰のある筆記感でした。
D「いいですね」
T「上に反っているので、あたかも筆記角度を小さくした時のようなイメージで書けるんですよ。10号ニブなので、バランスがいいと思うんです。フォルカンのように柔らかくはなくて、むしろしっかりしたニブなんですよ。こちらもどうですか」
と、別のウェーバリーを手渡してくれました。ペンはカスタム743でした。
D「743のウェーバリーですか。ちょっと線が太いですが、ゆったりとした感じがしますね」
T「線の太さは調整次第なんで、743じゃなくて10号ニブでもこのような太さにすることはできますよ。15号になると、奥深さというかそういう感じはでてきますよね。実用的には10号ニブくらいでも十分だとは思いますよ。」
D「調整なしでもこのくらい書けるんですか?」
T「基本的には無調整でもいいですよ。ただ、先ほども言ったように、万人向けの調整がなされていますので、ちょっといじってあげたほうがお客様の好みに合うかもしれませんね」
T「せっかくなんでこれも試してみますか。カスタム845で、こちらは・・・」
D「エボナイトですね」
T「そう、エボナイトに漆を塗ってるんで、触り心地がいいですよ。太字ですがどうぞ」
さらさらっと書いてみると、得も言われぬ滑らかさ。
D「ほほぅ、これはいいですね。この紙がいいんですかね」
T「こちら、ざらつきテストの紙なんですが、こちらでも書いてみますか?」
サラサラサラ・・・
D「・・・ふむ、いいですね。太字は普段使うシーンが思い浮かばないので、いりませんが、でも、ちゃんと調整すると万年筆ってこんな感じにまでなるんですねぇ・・・」
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T「エラボーも試してみます?」
D「へぇ、書いてみたことないんで気になります」
サラサラっ
D「思ったよりもグニャグニャではないんですね。そして、結構なめらかですね」
T「柔らかいのがあまりこのみではないなら、フォルカンよりはエラボーの方が気に入ると思いますよ」
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だいたいこんな感じで話をしてきました。
今回、普段あまり触る機会のない特殊なニブの万年筆を試せたのと、メーカーの人の話を聞けて非常に理解が深まった感じがしました。
特殊ニブにはあまり興味がなくて、次は742のMを買おうとほぼ決めていたので、ここでウェーバリーを試したのは収穫でした。実は、あまりにも気に入って、D「じゃ、これ買います」と言ったんですが、あいにく在庫がなくて手にすることはできませんでした。
T「もしよろしければ、明日お代金だけいただければ、さっき触ったようなペンにまで調整した状態で後日お渡しすることは可能ですよ。もしよろしければ、明日も来てください。何本でも調整しますから」
D「明日、時間があればまた来ます。購入のほうは考えておきます」
さて、一晩迷わねば・・・