TWSBI DIAMOND 580ALのニブを中字に戻した

以前、TWSBI DIAMOND 580ALの中字を購入し、当初、インクは瀬戸内マリンブルーを入れました。ニブとの相性が悪いのか、ファーストタッチでインクが出にくいでした。TWSBIの万年筆はペン先がねじを緩めるだけで交換できる構造になっているので、簡単にペン先を交換することができます。そこでもともとフローのいいFニブと交換して使っていました。

昨日、ペンクリニックで馬尻気味のMニブを少し調整してもらったので、試しに元に戻してみました。

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早速いろいろ書いてみたところ、非常に調子よくインクが出てくることが確認できました。下の紙はMD用紙です。

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このインクは色彩雫よりも若干線が細くなるのも特徴です。紙にもよりますが、カクノのMと同じくらいです。

TWSBIのMの書き心地はM400に引けを取らないほどです。ペン先だけならカクノもかなりハイレベルですが、ニブの大きさやしなり具合が筆記感に違いをもたらしています。TWSBIはかなり気に入っています。

少し残念なのは、ピストンがすぐにきつくなること。専用工具で分解できるので、シリコーンオイルをつけ足したりできるのですが、それでも時間が経つとピストンが固くなってくるようです。ペン先よりもメカニカルな部分が壊れるのが早い気がします。パイロットの人も、TWSBIは軸が割れることがあるので気を付けてくださいと言っていました。その時は新しいのを買って、ペン先だけ移植するという手もあるので、それほど心配はしていないのですが。そのうち、シリコーンオイルを粘土の高いものにするか、フッ素系オイルに変えてみようかと思います。

スチールニブの万年筆はなぜ「書きやすい」と感じるのか

スチールニブの万年筆はなぜ「書きやすい」と感じるのか。いや、そうじゃないよ、金ペンの方が書きやすいし、と思う方もいるかもしれません。しかし、わたしはスチールニブの万年筆の方が当たり外れなく、書きやすいと感じます。特にパイロットのカクノ、コクーン、プレラあたりは失敗がほぼありません。その辺を、昨日、パイロットの土田さんに少し聞いてみました。

以下、D:私、T:土田氏

D「パイロットのスチールペンって書きやすいですよね。カクノ、コクーン、プレラあたりはハズレと思うような製品にあたったことがなくて気に入っています。」

T「あの辺りはかなり技術が成熟してきていてペン先は共通なんです。スチールは金よりも筆圧に対するペン先の変形が少ないんです。ですから、最初からスリットを開き気味に設定しています。ですから、軽く置いただけでインクが出るようになっているんです」

まずはじめに、ちょっとだけ万年筆のペン先を見てみましょう。

↓これはTWSBIのペン先を筆記する側から見た写真

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↓これはインクが入っていない状態

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↓これは最近のカクノやコクーン、プレラのペン先(ペンポイントがえぐれたようにへこんでいるように見えるのは光の反射のせいです)

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インクが入っていない状態だと、ペン先のスリットがわずかに開いている様子がわかります。ちなみに、インクを入れるとこの隙間はインクで埋まるので、光にかざしてもこの隙間は見えないでしょう。(実は、金ペンでも、軽く紙に乗せただけでインクが出るような万年筆はスリットが開いています。)

金ペンはしなやかに変形することで、軽い筆圧でペン先が開いたり閉じたりします。そのおかげで柔らかい筆記感や線のメリハリが生まれます。筆圧によりスリット幅が敏感に変化しますので、書き方によっては線が安定しない、引っかかるといった感じを受ける場合があります。この辺を考察したのが下の記事です。

digistill.hatenablog.com

実際、万年筆の良さを体験したいなら、カクノの中字(M)で十分です。純正カートリッジを入れ、軽い筆圧で書いてみてください。コツはねじらずに書くことです。ねじらずに書くことでより滑らかな状態を安定してキープすることができます。やれ金ペンだ、TWSBIだと騒ぐまでもなく、それが書きやすい万年筆というものです。ただ、スチールペンでも上はあります。実際TWSBIのMはより滑らかだと感じますし、スチールニブにしてはしなやかですので、金ペンに近い雰囲気を感じます。

よく調整された金ペンにはそれなりの魅力があるのも確かです。ただ、いきなり高級なペンを買う必要はないと思います。(わたしはそんなに高級なペンを持っているわけでもないですし、それほど経験があるわけではありませんが)。筆圧を抜くことやねじらずに書くことができないと、金ペンの良さは感じにくいと思います。

あとは趣味の問題ですが、せっかくなのでいろんなペンを経験し、個性を味わいながら徐々にステップアップしていくほうが楽しいと思います。例えば、カスタム743などは3万円で買えます。おそらく極上の書き味が味わえます。しかし、カクノの後にコクーンやプレラを手にすれば、ペン先は同じでもこんなにも書き味が変わるのだということを知ることができるでしょう。サファリを使えば、同じスチールペンでもこんなにも雰囲気が違うものもあるんだな、これはこれでいいかもとか思えたりします。TWSBIを使えば、台湾製の万年筆も悪くないことに気が付きますし、吸引式や透明軸の魅力に気が付き、インクをいろいろ試したくもなるでしょう。1万円クラスのペンを買う際には、いろんな種類のニブが存在するのでどれを選んだらいいか迷うでしょう。細字を買えば、中字の滑らかさが気になり、中字を買えば、細字で細かく書き込みたいという衝動が出てくるかもしれません。意外とスチールニブの方が書きやすいと感じるかもしれませんし、悶々と悩むうちに、ペンクリニックが気になりだします。そこでいろんな知識を身に着け、万年筆は育てるものなんだということに気が付かされ、よりよいペンを求めてさらにさ迷うことになります。

 

 

FA(フォルカン)の印象

そういえば、今日、はじめてフォルカンを試してみました。

フォルカンというのはパイロットのペン先の種類の一つです。詳しくは下のリンク先を参照してください。

万年筆のペン先の種類 | 万年筆は「書く為の道具」 | 特集記事一覧 | PILOT LIBRARY | PILOT

また下のウェブページにも詳しい説明があります。

パイロット万年筆 フォルカン・FA ニブ(ペン先)のご紹介

簡単に言うと、ニブの一部に切り欠きを構造を設けることで、ペン先がしなやかに変形し、柔らかい筆記感となるわけです。

特徴のあるニブなので、YouTubeなどでたくさんアップロードされています。その印象からグネグネと落ち着きのないニブなんだという先入観があったのですが、実際に書いてみるとそうでもないでした。確かに力を入れると変形はしますが、それほど過度な変形という感じは受けませんでした。

個人的にあの筆記感が必要かというと、今はその必要性を感じませんでした。ただ、思っていたよりもしっかりした印象が残りました。試してみないとわからないものです。こういう特殊ペン先に触れられるのもペンクリニックのだいご味かもしれません。

今日もペンクリニックに行ってきました

今日も昼過ぎに本通りの多山文具で開催中のパイロット土田氏のペンクリニックに行ってきました。ちょうど昼ご飯から帰ってきたばかりで、予約の人は誰もいない状態でしたので、行ってさっそく調整をしてもらいました。

これだけの万年筆を持っていきました。

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左から

  1. パイロット カスタム74改
  2. ペリカン M400 EF
  3. セーラー プロフィット21改
  4. TWSBI DIAMOND580 M
  5. TWSBI DIAMOND580AL F
  6. 無印良品 アルミ丸軸万年筆
  7. パイロット プレラ F
  8. パイロット キャップレス絣 F
  9. セーラー ハイエースネオクリア
  10. パイロット ボーテックス M
  11. ラミー Aion M
  12. ラミー Safari M

1,2,3,4はできたら調整してもらいたいと思っていました。

カスタム74ははじめて購入した金ペンです。FMを買ったのですが、どうにもパイロットの初期設定になじめず、ペンクリニックで長原さんに調整してもらった経緯があります。その後、調子が悪くなり、使わずにいたものです。パイロットの人にセーラーの人が調整したペンを調整してもらうのも気が引けたのですが、さすがプロ、長原さんあたりが調整されたんですかねと当ててしまいました。広島なので、なんとなく推測しやすかったのかもしれませんが、さすが。調整後は普通に書きやすいペンになりました。

ペリカン M400は前回大阪で調整もしてもらいましたし、特に大きな問題は感じていないのですが、斜め筆記時に若干擦れが強くなる感じがしたので、その部分を見てもらいました。見てもらいましたが「特に大きな問題はないですね。ペンポイントもちょうど半分のところに切り割がありますし、これは当たりのペンですよ」と言われました。「少し気になる部分を調整してみましょう」。万年筆というのは良ければ、いいなりに使っていると些細な部分が気になってしまうものです。おそらくこれでもう終わりっていう風にはならないのかなと思ったりもします。今回の調整でM400はかなりいいところまで来ました。ニーモシネくらいの紙に書けば、極上感を味わえるレベルです。紙の質を落とし、厳しい目でみれば、まだ100%という感じではありません。ただ、使うのがしんどいというほどのことはなく、使ううちにどのくらいなじんでくるかが楽しみです。

プロフィット21も大阪で調整済みなので、大きな問題はないのですが、若干ブレーキがかかりすぎな感じがするので、ちょっと滑らかさを出してもらいました。もともとはBなのですが、長原さんにFくらいに細く削ってもらっています。細字なので筆圧を高くするとどうしてもザラツキ感は出てしまいますが、筆圧を下げ、ロディアレベルの紙に書けば十分に滑らかに書けるレベルです。

ここあたりで次のお客さんが来たので、最後の一本です。

最後の一本はTWSBIのM。これはインクが色彩雫なら問題ないのですが、別のインクを使うとファーストタッチでインクが出にくくなるのが気になっていました。「馬尻気味になっていますね」。ということで、若干、丸みを取ってもらうような調整をしてもらいました。若干フローを多めにしてもらい、調整完了です。

 

ちなみに、最後にウェーバリーを購入してきました。一晩迷って決めたのは、カスタムヘリテイジ912のWA(ウェーバリー)です。ちなみに、店頭在庫はなかったので、発注後、店に来た後、修理扱いでパイロットに送り直し、店頭で受け取るという流れになるようです。おそらく、商流の問題なのでしょう。受け取りは、ゴールデンウィーク前後になるそうです。

カスタムヘリテイジのニブは銀色のロジウムメッキが施されており、若干の硬さを感じる場合があるそうですが、基本的にはメッキなしのものを同じと思っていただいて問題ないということでした。カスタム742、カスタム743、カスタムヘリテイジ912のWAがそれぞれあったので、書き比べ、好みのものを探しました。カスタム742のものがすごく好みでした。743のはフローが多すぎてちょっと好みじゃないでした。この違いはニブの大きさによるものではなく、あくまでも調整の問題だそうです。743を絞って比べてみますか?と言われました。「この742に近い感じに仕上げてもらえばいいです。カスタムヘリテイジでも同じと考えていいですよね?」と尋ねると、「ロジウムメッキの影響はそんなにないでしょう。この742はかなり以前から少しずつ調整を重ねていて、かなりコンディションがいいのは間違いないです。でも、近い感じにまでは持っていくようがんばります」ということでした。ウェーバリーの魅力は書いてみないとわからないと思います。ニブの柔らかさや線幅の変化を楽しむというペン先ではなく、滑らか番長といった感じです。そのようなペン先に興味がある人は一度試してみる価値はありますよ。

実店舗は定価販売だと思っていたのですが、 現金払いだと1割引きということで、ちょっと得しました。来たらまたレポートします。

パイロット万年筆 カスタム ヘリテイジ912 ブラック ウェーバリー(WA) FKVH-2MR-B-WA

パイロット万年筆 カスタム ヘリテイジ912 ブラック ウェーバリー(WA) FKVH-2MR-B-WA

 

 

ペンクリニックに行ってきました(パイロット土田氏@多山文具)

本通りの多山文具で開催中のペンクリニックに行ってきました。出張帰りだったので、ほとんど終了間際でした。ちょうど片付けを始めた時だったのですが、快く応じてくれました。今日は間に合わないと思って、行く予定ではなかったので、手持ちの万年筆がサファリだけでした。特に不満はないペンなのですが、書き出しが少しスムーズじゃないと言われ、少し調整してもらいました。

10分ほど雑談をさせてもらう中でいくつか発見がありました。

以下、D:自分、T:土田氏

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D「パイロットのカスタム74を持っているのですが、正直、あまり好きじゃなかったんですよ。書き出し時に筆圧がいる感じで・・・」

T「そうならないようにするにはペン先を少し開いてあげるといいんですが、そうすると、線の終わりがボテッとしたような感じになるんです。パイロットの万年筆は、はねや払いの時に線が細くなり、毛筆で書いたようなメリハリをつけるために、標準ではペン先を少し絞っているんです」

D「そういう話をどこかで聞いたことがあるんですが、やはりそういうことなんですね。」

T「もちろん、調整すれば筆圧なしで書き出しからインクがたくさん出るようにすることは難しくありませんよ」

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D「Mくらいの線幅で、なんかおすすめの万年筆はないですか」

T「そうですね、細さにこだわりがないなら・・・、ちょっと座ってみてください」

そこでおもむろに万年筆がずらりと並んだペンケースを机に広げました。

T「これ、ちょっと試してみてください」

D「これは、カスタム74・・」

T「742のウェーバリーです」

D「上に反ったようなペン先のやつですね。あまりグニャグニャしたニブは好きじゃないんですが」

書いてみると、中字か中細くらいの太さで、非常に滑らかに書けました。そして、全然グニャグニャはしておらず、しっかりと腰のある筆記感でした。

D「いいですね」

T「上に反っているので、あたかも筆記角度を小さくした時のようなイメージで書けるんですよ。10号ニブなので、バランスがいいと思うんです。フォルカンのように柔らかくはなくて、むしろしっかりしたニブなんですよ。こちらもどうですか」

と、別のウェーバリーを手渡してくれました。ペンはカスタム743でした。

D「743のウェーバリーですか。ちょっと線が太いですが、ゆったりとした感じがしますね」

T「線の太さは調整次第なんで、743じゃなくて10号ニブでもこのような太さにすることはできますよ。15号になると、奥深さというかそういう感じはでてきますよね。実用的には10号ニブくらいでも十分だとは思いますよ。」

D「調整なしでもこのくらい書けるんですか?」

T「基本的には無調整でもいいですよ。ただ、先ほども言ったように、万人向けの調整がなされていますので、ちょっといじってあげたほうがお客様の好みに合うかもしれませんね」

T「せっかくなんでこれも試してみますか。カスタム845で、こちらは・・・」

D「エボナイトですね」

T「そう、エボナイトに漆を塗ってるんで、触り心地がいいですよ。太字ですがどうぞ」

さらさらっと書いてみると、得も言われぬ滑らかさ。

D「ほほぅ、これはいいですね。この紙がいいんですかね」

T「こちら、ざらつきテストの紙なんですが、こちらでも書いてみますか?」

サラサラサラ・・・

D「・・・ふむ、いいですね。太字は普段使うシーンが思い浮かばないので、いりませんが、でも、ちゃんと調整すると万年筆ってこんな感じにまでなるんですねぇ・・・」

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********

T「エラボーも試してみます?」

D「へぇ、書いてみたことないんで気になります」

サラサラっ

D「思ったよりもグニャグニャではないんですね。そして、結構なめらかですね」

T「柔らかいのがあまりこのみではないなら、フォルカンよりはエラボーの方が気に入ると思いますよ」

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だいたいこんな感じで話をしてきました。

今回、普段あまり触る機会のない特殊なニブの万年筆を試せたのと、メーカーの人の話を聞けて非常に理解が深まった感じがしました。

特殊ニブにはあまり興味がなくて、次は742のMを買おうとほぼ決めていたので、ここでウェーバリーを試したのは収穫でした。実は、あまりにも気に入って、D「じゃ、これ買います」と言ったんですが、あいにく在庫がなくて手にすることはできませんでした。

T「もしよろしければ、明日お代金だけいただければ、さっき触ったようなペンにまで調整した状態で後日お渡しすることは可能ですよ。もしよろしければ、明日も来てください。何本でも調整しますから」

D「明日、時間があればまた来ます。購入のほうは考えておきます」

さて、一晩迷わねば・・・

 

万年筆 カスタム742 ウェーバリー(WA)【黒軸】 FKK2000RBWA

万年筆 カスタム742 ウェーバリー(WA)【黒軸】 FKK2000RBWA

 

 

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