万年筆って、軸の太さやデザイン、バランス、重量、ニブの材質や大きさ、ペン先の太さ、仕上げなどで微妙に書き心地が違う。
万年筆の増殖もひと段落して、最近は使用頻度の低い万年筆からはインクを抜いている。
よく使うのは、パイロットのキャップレス(F)、パイロットのコクーン(F)、パイロットのボーテックス(M)、パイロットのデスクペン(EF)、セーラーのプロフィット21(B→F相当?)だ。その他、サファリも使える状態にはしてある。
パイロットの万年筆は全てカートリッジで運用しているため、必然的にパイロットでそろえる方が面倒がないというのもあるけど、パイロットの万年筆は外れがなくて使いやすいのだ。ただ、万能と言われているカスタム74はちょっと筆圧をかける感じじゃないといけないので、なんとなく好きになれない。キャップレスは少しだけペン先調整してもらっているのもあるのかもしれないが、とにかく書き心地がいい。ノック式にもかかわらず、インクはかなり乾燥しにくく、1か月程度放置していても全く問題なく筆記できる。万年筆をどれか一本選べと言われたら間違いなくキャップレスを選ぶ。ボーテックスも調整してもらっているので初期状態を知らないがこれまた書き心地がいい。この万年筆はすでに製造中止になっているが、グリップがゴム(エラストマー?)という何とも変わり種の万年筆だ(ペリカーノジュニアもゴムグリップだけど)。見かけたら確保したい万年筆である。コクーンに関してはF、Mともに購入したままで使っているが、書き始めの直後から滑らかによく書ける。おそらくパイロットの万年筆は買ったままでどれもよく書けるんだと思う。
一方、セーラーのプロフィットは長原さんにBをFMからF程度に研いで細くしてもらったものだ。カスタム74を調整してもらった時もそうだったけど、長原さんの調整した万年筆はサリサリする。カスタム74は引っかかりもあったので、自分で切割を広げた。それはともかく、プロフィット21はサリサリだけど、引っかかりはなく、気持ちよく書ける。厳密にいえば引っかかっているからサリサリするんだろうけど、ブレーキがかかるような抵抗ではなく、ちょうど鉛筆で書いているような抑揚のある摩擦感なのだ。これを筆圧を抜いてサラサラ書くと、すごく気持ちがいい。この書き味は万年筆じゃないと再現できない。サラサラかけるだけなら水性ボールペンでもいいんだろうけど、根本的にインクの流れというか、乗り方が全然違うのだ。よく万年筆は滑らかに書けるという表現を見かけるけど、滑らか具合だけでいえば新油性ボールペンとかの方がヌルヌル滑らかだと感じる。万年筆は金属と紙繊維の適度な抵抗感に、毛細管現象でインクがペン先から紙の繊維にスムーズに移動する現象が加わることで独特の筆記感を生んでいると思う。むしろ適度な摩擦があるためにペン先が暴れず、安定感につながっている。
プロフィット21をしばらく使ったあと、コクーンなどを使うと、滑らかすぎてボールペンで書いているかのような感じがする。とはいえ、適度な摩擦はあるので、ペン先が暴れるような不安定感はない。
ヌルヌルかサリサリか、どっちがいいのかなぁ。どっちにもそれなりの良さが感じられる。
万年筆は決して万能な筆記具ではない。筆箱に入れてガチャガチャ振られるとインクがもれるし、時々洗浄してあげないといけないし、筆記感も時々刻々変わる。時々はずれを引くこともある。しかも、比較的高い。道具として考えればゲルボールペンとかの方がはるかに使いやすい。しかし、具合のいい万年筆の筆記感はどの筆記具をも凌駕する心地よさがある。ただ、最初にも書いたように、ホント、千差万別というか書き心地は銘柄ごと、あるいは個体ごとに少しずつ違う。ある意味、めんどくさい筆記具と言えばめんどくさい筆記具なのだ。