プラチナ万年筆 キュリダスをいち早く触ってきました(試筆も)

プラチナ万年筆のキュリダスをいち早く触ってきました。

店員さんに許可をもらって、撮影させてもらいました。

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試筆させてもらったのはFでした。

コンバーターが装着されていたので、ちょっと重くなっていたと思います。手にした感じは程よい重さで、特に軽すぎるとか重すぎるとかという印象はありませんでした。パイロットのキャップレスのようなソリッド感はないものの、チープな印象はありませんでした。

ノックする部品は長く、ノックする前はちょっと大きめの万年筆という感じに見えると思います。

ノックすると小気味よいカチッとした音がして、安っぽい感じはしませんでした。

オンラインの画像ではシャッター部分の密閉構造がどうなっているのかよくわからなかったので、動作しながら確認してみました。楕円状の部品が竹を斜めに割ったような部品に密着するような構造でした。

ニブそのものは完全に固定されているわけではないので、若干の遊びはあるようでしたが、筆記時にニブのグラつき感じることはありません。

実際に書いてみると細字Fにも関わらず非常に滑らかでした。他の字幅もどんな感じなのか気になるところです。

第一印象としては、欲しいと感じさせるものには仕上がっていたと思います。

ちなみに、手のひらに乗せるとこんな感じ。

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キュリダス(ナガサワ文具センターウェブサイト)、そして、万年筆の保管方法

ナガサワ文具センターのウェブサイトに、もうすぐ発売されるプラチナ万年筆のノック式万年筆「キュリダス」の詳しい情報がありましたので、紹介します。

kobe-nagasawa.co.jp

最初、SNSで情報を見たとき、ニブはプロシオンのに似てるかなと思ったのですが、よく見ると全然違いました。メーカーウェブサイトにニブの型番が書いてありました。「ペン先:ステンレスペン(ST-2)」。似たものを探すとカーボンペンのニブが似ていますし、型番も「STY-2」なので似ています。カーボンペンのニブには金メッキがなされているのでYはその意味だとすると(メッキの英語はplatingなので、Yの由来はわかりませんが)、形状は同じなのかもしれません。

ところで、ノック式万年筆の場合、インクの揮発性が気になります。メーカーのウェブサイトからデータをピックアップすると、キュリダスは1年で約30 %のインクが残存するようです。参考までにプレピー、プレジールは約60 %、#3776センチュリーは約72 %です(グラフからの読み取り値)。このデータはインクが満タン状態(1.2 cc)からのインク揮発テストのようですので、単純計算で言うと、プレピー・プレジールは年間0.48 ccのインクが失われることになります。同様に計算すると、キュリダスは0.84 cc、#3776は0.34 ccということになります。厳密に言うと、キュリダスのグラフには初期設定条件が書いてありませんので、もしかしたら、間違った考察になっている可能性があることを断っておきます。インク残量が少ない状態で月単位で放置すると、ドライアップする可能性があります。グラフを見ると、インクが少なくなるほど揮発速度が上がる傾向にあるので、インクが少なくなった時にはある程度使うことを意識したほうがいいかもしれません。

ちなみに、パイロットのキャップレスでインクがドライアップしたことはありません。

経験的なことをいうと、万年筆はペン先を上にして放置するとインクが乾燥して書き出しにかすれる傾向があります。ペン芯にインクタンクのインクが接していないわけですから、ペン芯のインクがどんどん揮発して濃度が高くなるわけなので、理屈的にもあっています。かといって、ペン先を下向きにするとインクが漏れるリスクもあります。わたしは基本的に万年筆は横置きにしています。横置きだとスライドキャップ式の万年筆でもそう簡単に書き出しからかすれるという状態にはなりません。もちろん、数か月も放置するとその限りではありませんが。

インクが入った万年筆は時々インクの量をチェックしたほうがいいです。もし、数か月も使わない状態が続くようなら、インクを抜いて、ペン先を水洗いし(一晩くらい水につけて、流水で軽く流します。色はしつこく出てきますが、少量はわたしは気にしていません)、よく乾燥させてから(1,2日、放置)、保管しておくほうがいいでしょう。

LAMY サファリ(シャープペンシル)の独特のソフト感

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LAMYサファリのシャープペンシルの内部機構は、ちょっと独特です。

一般的なシャープペンシルは、口金を開くと、芯とチャックが露出します。しかしながら、サファリの場合、こんな感じです。

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口金と内部機構の間に隙間があるからか、アマゾンのレビューなどを見ると、ぐらぐらするという意見がありますが、わたしはそれほど気になりません。いわれてみればぐらぐらしますが、カチカチと音は鳴りません。

最近、いろんなシャープペンシルをかわるがわる使っているのですが、サファリは紙と芯との当たりがソフトです。なんでかなぁと思って、内部を詳しく観察してみると、次のことがわかりました。

内部機構を見ると、樹脂製のバネがあるのが見えます。これは口金を締め込んだ際、内部機構とのガタを無くすための部分と思われます。ちょっと長めに設計しつつ、この部分に緩衝させようという発想でしょう。

似たような設計はプラチナのプロユース171にも見ることができます。

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それにしてもプロユース171の内部構造は複雑ですね。

プロユース171はもともと芯クッション機能があり、そちらが積極的に動作するため、この部分の弾性は感じません。もっとも、芯クッション機能をロックしても感じませんが。サファリはこの樹脂バネ構造による弾性が感じられます。芯を紙に押し付けるとわずかに芯が内部に入っていく様子がわかります。おそらく芯クッション機能として設計されたわけではないのではないかと思いますが、結果的にわずかながらも芯が沈み込むため、紙に芯が当たるショックを和らげる効果が出ていると思います。全体的な構造が関係しているのか、芯クッション機能のあるプロユース171よりも紙への当たり感はソフトです。

 

プラチナ万年筆 プロユース MSD-1500B(プロユース1500 0.5)

松山市の東急ハンズで筆記具を見ていたら、見慣れないシャープペンシルが目に入りました。プラチナ万年筆のMSD-1500です。このシャープペンシルを実店舗で見ることはほとんどなく、初めて見ました。以前から買おうと思っていたのですが、一度触ってからと思っていたので、念願がかないました。しかし、店頭にあったのは0.3 mm。買うのはあきらめ、ヨドバシ・ドット・コムで0.5を発注しました。

VIP待遇でやってきました。

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ちなみに、MSD-1500にはMSD-1500A、MSD-1500B、MSD-1500Cという型番が存在しますが、ABCというのは、それぞれ芯径0.3, 0.5, 0.7に相当します。

ついでにまとめておくと、プラチナの製図用シャープペンシルには、基本ラインとしてMSD-300, 500, 1000,1500があり、また、プロユース171にはMSDA-1500という型番が付けられています。ちょっとややこしいです。

さて、このMSD-1500B、ひとめでなんか違います。

まず太くて短い。

プロユース171と比べるとこんな感じです。

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製図用シャープペンシルは芯硬度表示窓があるのが普通ですが、このペンはペン先にリングがあって、下の写真のように表示します。

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知っている限り、ファーバーカステルのバリオLがペン先で表示する方式です。

 グリップはローレットではなく、こんな感じです。

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なだらかな凹凸が程よいグリップ感となっています。ゴムやローレットのような食い込むようなグリップ感ではありませんが、グリップ感はあります。

クリップ付近の軸は若干細くなっており、また、クリップ自体も薄型のため、クリップが邪魔になりにくい設計になっています。

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パイロットのSシリーズが同じような設計思想ですね。

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それでも邪魔なら、ネジを外すことでクリップを外すこともできます。多くの製図用シャープペンシルのようなはめ込み式のクリップではありません。

重量は22.1グラムでした。程よい重さです。

重心は以下の通り。

下の写真はプラチナのプロユースシリーズで、上からMSD-500、MSDA-1500、MSD-1500Bです。

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MSD-1500Bはペンの相対的な位置でいえば、程よい低重心ということになりますが、ペン先からの位置でいえば、十分低重心と感じます。グリップから離れた部分に重量がない分、ペンのハンドリングはしやすいと感じます。

グリップ感とかは違いますが、ペンの取り回し感はケリーに似てます。

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少しペンを振ってみるとわかるのですが、このMSD-1500Bは各部品のガタつきが全くといっていいほどないため、カチャカチャ振動する感じが全くしません。ノック音は軽快で、エンドキャップの勘合力も適切です。緩すぎず硬すぎません。また、内部ユニットもOリングによって無駄な振動音を抑えるような設計になっています。細部までしっかり作りこんであります。

まだあまり使っていないので、長時間使ったときなどの感想は言えませんが、ファーストインプレッションとしては、好きですね。全芯径揃えたくなりました。

 

文房具56話 串田孫一 ちくま文庫

昨日、もう一冊文房具の本を買いました。

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文房具56話 串田孫一 ちくま文庫

串田孫一さんは、大学の先生で、随筆家・詩人・哲学者らしいです。アマゾンでどんな本を書いたのか調べてみたら、「山のパンセ」がありました。これはどこかで聞いたことがあります。

この本の元は、月刊事務用品という月刊誌に1970年1月号から1973年12月号まで連載されたもののようです。単行本として発行されたのが1978年とあります。わたしは月刊誌が刊行されている途中で生まれました。

目次を見ると、帳面、ペン先、消しゴム、ぶんまわし、インキ、万年筆、糊、白墨・・・・と続きます。ちょうど糊のところまで読みました。「ぶんまわし」というのはコンパスのことです。本文を読めばわかりますが漢字で書くと「分廻し」となります。なるほどそう書けばなんとなくコンパスのような気がしてきますね。

例えば、糊のところを読むとヤマト糊のことが書いてあります。わたしはどこかで読んで知っていましたが、ヤマト糊のヤマトって、大和じゃなくて、矢(や)的(まと)のことなんですね。知ってましたか?

「ヤマト糊は、容器は変わったが、今でもなかなか便利である。小学校の頃には青い硝子の容器で、蓋はブリキで、そこに矢と的がついていた。しばらく使わずにいると、罅割れたり、黴がはえたり、蓋の裏側には錆がぶつぶつに出来た。」

こんな感じで書いてあります。「ヤマト糊のヤマトは大和じゃなくて、矢的だよ」なんてストレートには書いてありません。

内容的にはずいぶん古いと感じるのですが、ちょうど生まれたころに書かれたということもあり、なんとなく当時の雰囲気をうかがい知る感じはあります。とはいえ、作者は1915年生まれなので、書かれている内容はもう少しさかのぼった時代のことなのかもしれません。ただ、少なくとも1970年当初に読んでも違和感のない内容であったのは間違いないと思います。

もうひとつ「萬年筆」から少し抜粋します。

「ところがあまり使う度数の少なくない人ほど、書き味、インキの出方を気にして、どんどん買うように思える。それとデザインが新しくなればそれがまた欲しくなる。これは萬年筆に限らず、一般現象であって、それですべて商売も成り立っているのだろう。」

この辺の事情は今も似たり寄ったりですね。耳に痛いです。汗

この本は読みやすくて、とにかくおもしろい。文房具にまつわる個人的なエピソードだけでなく、ちょっとした豆知識も随所に書いてあります。文房具に関するこんな文章が読みたかった。文房具好きなら、きっとおもしろさがわかるはず。

文房具56話 (ちくま文庫)

文房具56話 (ちくま文庫)

  • 作者:串田 孫一
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2001/01/01
  • メディア: 文庫
 

 

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