百貨店や文房具店で時々開催されるペンクリニックというイベントがあります。定期的に行われている店舗もあるようですが、広島では不定期なペンクリニックが多いです。
ペンクリニックというのはメーカーの万年筆の専門家が無料で調子の悪い万年筆のメンテナンスをしてくれるというイベントです。書き心地が悪いペンを書きやすくしてくれたり、ペンの調子を見てもらうだけでも問題ありません。
私のプロフィット21はもともと太字だったものをF字相当に削り出してもらっています。セーラーの工場に勤務している長原さんにやってもらったので、これを改造というべきかどうかは微妙なところです。ですから、プロフィット21は持っていますが、標準的なプロフィット21がどのようなものかは知りません。長原さんに調整しもらったプロフィット21ですが、少しザラツキがあるのが気になっていました。少し前、大阪難波で開催されたペンクリニックで仲谷さんに少しだけザラツキ調整してもらいました。だいぶザラツキは軽減したものの、まだ若干気になる引っ掛かりがある状態でした。
先日、広島で開催されたパイロットのペンクリニックで土田さんにさらにザラツキやフローの調整をお願いしました。
ザラツキというのはないほうがいいわけではないようです。むしろ、適度なブレーキがかかることによるペン先の過度な滑りを抑制するという調整方法があるようです。セーラーの長原さんの記事を読んでも、そのようなことが書いてあったと思います(セーラーの「もっと知りたい!万年筆のこと」というコーナーに書いてあったはずですが、今はウェブページ自体が削除されているようです)。ですから、長原さんの調整は若干そういう雰囲気を残しているんだと思います。
ただ、それが好みかどうかはまた別問題。書くというだけなら、間違いなく書きやすいです。筆圧ゼロでインクはスムーズに出ますし、途切れもなくフローも良好です。しかし、時々繊維一本分くらいを引っ張るようなプチっとかサリッのような抵抗が発生する角度がありちょっとざわつく感じが残っていました。しかし、今はほぼ皆無です。適切な筆圧で書けばかなり気持ちがいいです。
ペン先をメーカーの設計以上に削ったり調整するのを好まない人もいると思います。私の場合、そこのところにはあまりこだわりがなく、結果が良ければそれでいいと思っています。ただ、ペンクリニックのススメとはいうものの、注意も必要です。私の経験からして、必ずしも完璧になるとは限らないし、買った時とは大きく性質の異なるペンになることもあります。ペンクリニックと一言で言っても、いろんな人が開催しているので、必ずしも相性のいい人の出会うとは限りません。つまり、最悪ダメになってもしょうがないというくらいの気持ちの余裕は持っていたほうがいいかもしれません。ダメといっても書けなくなることはあるわけがなく、筆記感が好みに合わないという意味でのダメという程度の意味です。
仲谷さんや土田さんはペン先を機械で削ったりはせず、手で曲げたり、細目のラッピングペーパーで少しこする程度で、ペンポイントの形を大きく変化させるような調整はしていませんでした。
ところで、いまだに書き味ナンバーワンはパイロットのキャップレスです。筆記音はプロフィット21の方が小さいのですが、キャップレスは安定感が抜群なのです。万年筆らしい筆跡ではないですし、ゆったりとした書き心地ではないんですが、安定した筆記線が引け、Fにも関わらず引っ掛かりは皆無です。このキャップレスも調整後納品してもらっているので、初期状態を知りません。
シルキータッチとでもいうような極上な筆記感を感じれるのは、実は先日調整してもらったTWSBIの中字です。ニーモシネ程度の平滑度の紙に筆記すると素晴らしい書き味です。ニブはスチールなのですが、今のところ、ペリカンのM400よりも書き心地は上です。ただし、懐の深さはM400の方があり、タッチはやわらかめです。もう少し馴らしが進めばこちらの方が気に入る可能性はあります。