スチールニブの万年筆はなぜ「書きやすい」と感じるのか

スチールニブの万年筆はなぜ「書きやすい」と感じるのか。いや、そうじゃないよ、金ペンの方が書きやすいし、と思う方もいるかもしれません。しかし、わたしはスチールニブの万年筆の方が当たり外れなく、書きやすいと感じます。特にパイロットのカクノ、コクーン、プレラあたりは失敗がほぼありません。その辺を、昨日、パイロットの土田さんに少し聞いてみました。

以下、D:私、T:土田氏

D「パイロットのスチールペンって書きやすいですよね。カクノ、コクーン、プレラあたりはハズレと思うような製品にあたったことがなくて気に入っています。」

T「あの辺りはかなり技術が成熟してきていてペン先は共通なんです。スチールは金よりも筆圧に対するペン先の変形が少ないんです。ですから、最初からスリットを開き気味に設定しています。ですから、軽く置いただけでインクが出るようになっているんです」

まずはじめに、ちょっとだけ万年筆のペン先を見てみましょう。

↓これはTWSBIのペン先を筆記する側から見た写真

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↓これはインクが入っていない状態

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↓これは最近のカクノやコクーン、プレラのペン先(ペンポイントがえぐれたようにへこんでいるように見えるのは光の反射のせいです)

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インクが入っていない状態だと、ペン先のスリットがわずかに開いている様子がわかります。ちなみに、インクを入れるとこの隙間はインクで埋まるので、光にかざしてもこの隙間は見えないでしょう。(実は、金ペンでも、軽く紙に乗せただけでインクが出るような万年筆はスリットが開いています。)

金ペンはしなやかに変形することで、軽い筆圧でペン先が開いたり閉じたりします。そのおかげで柔らかい筆記感や線のメリハリが生まれます。筆圧によりスリット幅が敏感に変化しますので、書き方によっては線が安定しない、引っかかるといった感じを受ける場合があります。この辺を考察したのが下の記事です。

digistill.hatenablog.com

実際、万年筆の良さを体験したいなら、カクノの中字(M)で十分です。純正カートリッジを入れ、軽い筆圧で書いてみてください。コツはねじらずに書くことです。ねじらずに書くことでより滑らかな状態を安定してキープすることができます。やれ金ペンだ、TWSBIだと騒ぐまでもなく、それが書きやすい万年筆というものです。ただ、スチールペンでも上はあります。実際TWSBIのMはより滑らかだと感じますし、スチールニブにしてはしなやかですので、金ペンに近い雰囲気を感じます。

よく調整された金ペンにはそれなりの魅力があるのも確かです。ただ、いきなり高級なペンを買う必要はないと思います。(わたしはそんなに高級なペンを持っているわけでもないですし、それほど経験があるわけではありませんが)。筆圧を抜くことやねじらずに書くことができないと、金ペンの良さは感じにくいと思います。

あとは趣味の問題ですが、せっかくなのでいろんなペンを経験し、個性を味わいながら徐々にステップアップしていくほうが楽しいと思います。例えば、カスタム743などは3万円で買えます。おそらく極上の書き味が味わえます。しかし、カクノの後にコクーンやプレラを手にすれば、ペン先は同じでもこんなにも書き味が変わるのだということを知ることができるでしょう。サファリを使えば、同じスチールペンでもこんなにも雰囲気が違うものもあるんだな、これはこれでいいかもとか思えたりします。TWSBIを使えば、台湾製の万年筆も悪くないことに気が付きますし、吸引式や透明軸の魅力に気が付き、インクをいろいろ試したくもなるでしょう。1万円クラスのペンを買う際には、いろんな種類のニブが存在するのでどれを選んだらいいか迷うでしょう。細字を買えば、中字の滑らかさが気になり、中字を買えば、細字で細かく書き込みたいという衝動が出てくるかもしれません。意外とスチールニブの方が書きやすいと感じるかもしれませんし、悶々と悩むうちに、ペンクリニックが気になりだします。そこでいろんな知識を身に着け、万年筆は育てるものなんだということに気が付かされ、よりよいペンを求めてさらにさ迷うことになります。

 

 

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