ぺんてるから新しい製図用シャープペンシルPG-METAL 350が発売されました。
製図用シャープペンシルを一般筆記向けにアレンジしたような商品です。価格は税込385円です。
色展開は0.3と0.5が6色展開で、0.7と0.9はブラックのみです。0.3、0.5にもブラックがあるので全芯径を同じ色で揃えようと思ったら必然的にブラックを選ぶことになります。
今回私が選んだのは0.7のブラックです。
グラフ1000フォープロっぽいフォルムに金属のテカテカしたグリップが特徴的です。
初めに結論を言っておきましょう。一般筆記向けのシャープペンシルとしてすごくいいです。ラバーグリップほどのグリップ力はありませんが、特に滑りやすいとかそういう感じはありません。この辺は個人差があるとは思いますが。
カラーバリエーションがあるので中高学生や女性でも違和感なく使えると思います。他の色を見たわけではないのでなんとも言えませんが、私は黒が一番かっこいいなと思いました。
芯径は好みで選べばいいと思います。私は0.3はほとんど使いません。用途にもよりますが、普段使いは0.7か0.9を使うことが多いです。0.7, 0.9は芯が減りにくいのでBとか2Bを入れて使います。数学などの計算問題などを解くときには0.5、芯の硬さはHBがベストです。筆記線の濃さとノックの回数のバランスが一番いいと感じるからです。
さて、ファーストンプレっションが良かったPG-METAL350ですが、死角はないのでしょうか。これも結論から言うと、肝心のグリップの設計に若干課題があるんじゃないかと思います。
さて、その辺を含めながら、細かい部分を観察していきましょう。
重量は13.99グラムでした。芯込みの重量ですが、おおよそ14グラムってところでしょう。
重心の位置はグリップの上端部付近で、かなり低重心と言えます。
グリップの太さは太い部分が10.2 mm、細い部分が9.6 mmです。約10 mmですが、個人的には一般筆記向けシャープペンシルのグリップは10 mmくらいが一番使い勝手がいいと思います。ちなみに軸は直径φ8.9 mmです。
全部ではないですが、手持ちのぺんてるのシャープペンシルを引っ張り出して一緒に記念撮影してみました。
グラフギア1000を載せるのを忘れましたね。ケリーやキャップレット、ピアニッシモもぺんてるですがちょっと外見が違いすぎるので除外しました。それぞれ色違いや芯径違いで複数本持っているものが多いので、ぺんてるだけで一体何本あるんでしょうか。
上から2番目のシャープペンシルは海外のP365というモデルで、ブラジルではグラフギア800として販売しているようです。ちなみに、PG-METAL 350も海外ではすでに販売されていて、モデル名はグラフギア300です。
上から3番目のグラフ1000フォープロがデザイン的に一番似ているようですが、比べると全然違います。
なんとなくP365に似てるのかなと予想していましたが、これまた実際に手にしてみると違うシャープペンシルだと感じます。
特徴的なメタルグリップを観察してみます。
グリップは一枚の金属板をプレス成型および打ち抜き加工をしたものを円筒状に曲げて作ってあります。製法的に金属板の継ぎ目ができます。P365も同様に一枚の金属板から加工したグリップですが、継ぎ目がかなり目立ちません。下にそれぞれの継ぎ目部分の拡大写真を示します。
PG-METAL 350のグリップはがたつきが出ないよう、少し板を押し広げながら軸に装着するようになっています。がたつきを抑えるためには必要な設計だと思います。同様の製法で作ってあるP365は内部にラバーパーツがあるためラバーパーツがズレ防止や隙間を埋めるのに一役買っており、金属グリップはだいぶ余裕を持って設計されいます。グリップの弾性に期待していない設計なので、継ぎ目が広がりません。PG-METAL 350のグリップも軸から外すと隙間が狭くなってほとんどなくなります。
次にクリップを観察してみます。立体的な成型がなされていてなかなか綺麗なデザインです。
秀逸なのはこのクリップが非常に小さい点です。
上の写真と同じですが、再度掲載します。
グラフ1000フォープロはペン先からクリップの先端までが長く、筆記時に手に当たりにくい設計になっています。がグラフ1000フォープロに匹敵するくらいクリップ位置が高いです。これは一般筆記ようとしてもポイントが高いです。パイロットのS3、S5あたりもその辺の設計が秀逸なのですが、S5よりもクリップ位置は高いです。普通のペンの持ち方であれば手に当たって邪魔に感じることはほとんどないと思います。
消しゴムにはクリーナーピンはついていません。キャップは0.47グラムと軽量なので、筆記時に動いて軸内部と干渉し、ガタつくことはほとんどありません。さすがぺんてる、この辺の細かい設計は抜け目がないです。
内部ユニット。
これはぺんてるの汎用ユニットで、オレンズやP200シリーズなど定番モデルにはほぼこれと同じユニットが使われています。金属チャック部は3爪の真鍮製で、グラフ1000フォープロなどと同等品です。10万回の耐久性があると言われているSMASHもチャック部分はほぼ同等なので、耐久性に問題はないでしょう。
さて、各部の重量を少し細かくみてみましょう。
グリップと口金の重量の合計は5.6グラムで、全体の40%をこのパーツが担っています。グリップ内部には軸の一部や芯も含まれるのでおおよそ50%くらいの重量がクリップから先に存在することになります。グリップ上端付近に重心があったので事実と合います。
グリップ以外の基本構造はP365と同等と思っていましたが、PG-METAL 350の軸先端にはP365にはないOリングがあります。
拡大してみましょう。
これは金属グリップと軸を組み合わせた時のがたつきを抑えたり、軸とグリップのズレを防止するのに役立つと思います。
さて、問題の核心に近づいてきました。
まず、下の一連の写真を見てください。
さて、グリップ上端付近1、2の違い、グリップ下端付近1、2の違いがわかるでしょうか。
ちょっとだけグリップがズレているんです。
口金をしっかり締め込んでもグリップの金属が完全に固定されません。P365ではこのような現象はないのでちょっと残念です。
筆記時にガタガタ動くようなことはありませんが、なんとなく気になります。本来ならネジが締まりきる前に口金の端部がグリップの端部にあたり、そこでネジが締結されるのが理想的です。PG-METAL350は口金の端部とグリップの端部が当たる前にネジの締め込みが終わってしまうのでがたつき代ができてしまいます。
軸にシールを巻いて無理やり押し込む方法を試してみましたが、その場合、グリップの隙間が大きくなってしまうようです。
試しにシャープユニットを取り付けずにグリップと口金だけを軸に押し込んでみると、割ときっちりグリップがはまり込みます。私はこれは設計ミスというか加工精度が甘いんだと思います。グリップをコンマ2, 3ミリほど長めに抜き出せば解決できると思います。メーカーにはぜひ、改善をお願いしたいです。
グリップと軸は固定してもメンテナンス上問題はないので、瞬間接着剤などでくっつけてしまうのもアリだと思いますが、もう少し何か別の手段でがたつきを防止できないか考えてみます。