ノックペンシルM-1700 絶妙なバランス

ゼブラのノックペンシルM-1700を買ってきました。価格は220円です。

ロフトで見つけたんですが、まだ一本も売れていませんでした。

初代ノックペンシルは1980年に発売され、2001年に廃盤になっています。

ゼブラのウェブサイトを引用します。

1980年にゼブラが100円のシャープペン「ノックペンシル」を発売。鉛筆のような外観でノックすれば書き続けられる便利さで大ヒット商品となりました。一般に普及したシャープペンはその後、ラバーグリップ付きや金属製のボディなど高機能で高価格のものが人気に。シンプルな機能の『ノックペンシル』は2001年に廃盤。

鉛筆っぽい見た目ですが、重量は10.3 gで、割としっかりとした質量感があります。

写真だとちょっとグレーに見えますが、実際は限りなく白に近いグレーです。

口金は固定式です。

軸は角の丸い六角形で、辺の距離(太さ)は9 mmです。

軸の後端には繰り出し式の消しゴムが実装されています。

消しゴムのサイズは長さ16 mm、太さφ4.5 mmです。

消しゴム部の突起は転がり止めだと思います。あまり効果は高くありませんが、転がしてみると、キャップの有無で多少差があるようです。消しゴムを出す際の回転トルクを稼ぐ効果もありそうです。

新しいノックペンシルM-1700には振って芯を出すフリシャ機能が実装されています。

フリシャは違和感なく動作しますが、ドクターグリップと比べるとちょっと力が要る感じがします。音は特別うるさくはないです。音質が若干低めですが、ノーマルのドクターグリップと同じくらいに感じます。

口金は二つ割の樹脂チャックです。

樹脂チャックは悪く言われる場合がありますが、私は樹脂チャックのデメリットはほとんど感じません。

チャックの材料よりも、安価なシャープペンシルの場合、1ノックあたりの芯の繰出量が多いものがある方が気になります。

ノックペンシルの芯の繰出量は1ノックあたりおおよそ0.7 mmです。フリシャだとちょっと多くて0.85 mmです。繰出量は10回繰り出した後の芯の長さを計測し、1/10した値です。

コクヨの鉛筆シャープと並べてみました。

鉛筆シャープは重量が5.7 g(ノックペンシル 10.3 g)で、ノックペンシルの半分くらいの重さです。実際の鉛筆は4 g程度なので、鉛筆シャープの方が鉛筆に近い感じがします。軸の太さは鉛筆シャープがφ7.7 mmで、ノックペンシルのφ9.0 mmよりも細いです。実際の鉛筆の太さは7 mm程度なので、鉛筆シャープは重量も太さも鉛筆に合わせている感じがします。

見た目はよく似ていますが、手にした感じは全然違います。

上:鉛筆シャープ、下;ノックペンシル

鉛筆シャープの口金は収納できるタイプです。ちなみに、鉛筆シャープの芯繰出量は1ノックあたり0.9 mmです。ぺんてるの0.5 mmシャープは1ノック 0.5 mmで設計されていて、私もそのくらいが適切だと思います。

私はシャープペンシルを2ノックで使い始めます。

そうすると、ぺんてるのシャープペンシルの場合、ちょうど1 mm芯が出てきます。これがノックペンシルだと1ノックで0.7 mm、2ノックで1.4 mmになります。鉛筆シャープだと1ノックで0.9 mm、2ノックで1.8 mmとなります。2ノックだと明らかに長すぎです。

ただ、実際はちょっと状況が違っています。おそらく、樹脂チャックの特徴なんだと思いますが、ノックすると芯が一定量繰り出した後、ノックを離すとちょっと芯が戻ります。グラフ1000フォープロのようなシャープペンシルだとこのような挙動はしません。芯が戻るせいで、芯を収納した後、少しだけ芯が軸内部に入った状態で収まります。したがって、1ノック目の繰出量が総定量よりも小さくなります。

左から、グラフ1000フォープロ、ノックペンシル、鉛筆シャープ

ノックペンシルの芯がほとんど出ていません。つまり、ノックペンシルはノックした時に1.4 mmくらい芯を繰り出し、ノックを戻すと0.7 mm芯が引き込まれ、結果的に0.7 mmの芯を繰り出すような挙動をしていることがわかります。

2ノックした時の様子を観察してみましょう。

グラフ1000: 1 mm

ノックペンシル: 0.8 mm

鉛筆シャープ:1.5 mm 

以上の観察結果より、グラフ1000は最初からきっちり0.5 mm繰り出していることがわかりました。ノックペンシルは一回あたりの繰出量が多いはずなのに、0.8 mmしか芯が出ていません。鉛筆シャープも1.8 mmは芯が出ていないことがわかります。

ノックペンシルと鉛筆シャープは連立方程式を立てて、どうなってるか計算してみましょう。

以上より、ノックペンシルの正確な繰出量は0.78 mm、引き込み量は0.75 mm、鉛筆シャープは0.94 mm、引き込み量は0.38 mmとなっていることがわかります。

参考までに、10回ノックした際の様子も示しておきます。

2ノックした時の芯の初期量と一回あたりの繰出量をまとめます。

グラフ1000:1 mm、0.5 mm

ノックペンシル:0.8 mm、0.78 mm

鉛筆シャープ:1.5 mm、0.94 mm

こうまとめると、グラフ1000フォープロの設計の秀逸さがわかります。

どういうことかというと、前提として、0.5mmシャープペンシルは芯を1 mm以下で筆記することが好ましいとします。2ノックすると、グラフ1000とノックペンシルはその条件をクリアします。鉛筆シャープは芯が出過ぎです。じゃ、ワンノックならどうかというと、0.9375 - 0.375 ≒ 0.56となり、若干少なすぎます。

次に、芯が減った時にノックして芯を足す状況を考えます。

グラフ1000は半分減った0.5 mmになった時にノックすると元の1 mmに回復します。

ノックペンシルの場合、繰出量が0.78 mmなので0.22 mmになったときにノックすると芯が1 mmになります。0.5 mmの時にノックしても1.28 mmなので、まぁ、許容範囲と言えるでしょう。

しかし、鉛筆シャープは繰出量が0.94 mmなので1 mmの3割ましの1.3 mmに収めるためには0.36 mm程度まで芯を減らしてノックする必要があります。

このように、1回あたりのノック量が多いシャープペンシルというのは理想的な芯の繰出量をキープするのが難しいんです。

さて、ちょっと繰出量の話が長くなりました。

ノックペンシルM-1700は220円ですが、仕上げに粗はありません。

実際に筆記してみると、そのバランスの良さにおどろかされます。

好き嫌いは別として、道具として素晴らしいと思うシャープペンシルはそれほど多くはありませんが、ノックペンシルはその数少ないラインナップに入れるだけの力があるシャープペンシルだと思います。

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