新しいZOOMシリーズのL2を買ってきました。選んだのはシャープペンシルのマットフルブラックです。
軸はなだらかな流線型で、中央付近が3面、少しだけ面取りされています。
本題に入る前に少しパッケージを紹介しておきます。
購入するとこのようなしゃれた手提げに商品を入れてもらえます。
その後も、おもてなしの手を緩めません。
とどめは試筆用紙です。
さて、本題。
軸の表面にはネオラバサンというソフトフィール塗料が全体的に塗装されています。サラッとした手触りながら、適度なグリップ力があり、非常に心地いいです。ステッドラーのHEXAGONALの塗装によく似ています。
この手のソフト感のある塗料は従来から文房具には使われている例があります。しかしながら、樹脂が加水分解という劣化をすると表面がベタついたり、剥がれたりします。私が持っているペンで一番ひどい状態になっているのはジェットストリームの多色ボールペンです。
こうなると表面はベトベトで、少し引っ掻くだけで塗装が剥げます。この樹脂が何なのかは知りませんが、例えば、ボリウレタンなどは加水分解しやすい樹脂のひとつです。ポリウレタンは機械的な強度があり、グリップ性や成型性などが良いため、さまざまなところで使われている樹脂です。しかしながら、湿気や日光などで加水分解という分解反応を引き起こす場合があります。特にアルカリ性には弱いです。詳細な説明は省きますが、ポリウレタンと一言でいっても、様々なグレードのものがありますので、劣化しにくいポリエーテル系のポリウレタンなどがあります。機械特性が若干低く、高価であるという弱点はあるものの、ポリエステル系のポリウレタンよりも耐加水分解性が高いのが特徴です。
ZOOM L2に使われているネオラバサンは武蔵塗料*1というメーカーの特殊な塗料のようです。メーカーのウェブサイトには材質に関する情報がほとんど見られませんが、少し調べるとネオラバサンのことをウレタン塗料と表記している技術資料がヒットしました。その表記が正確だとすれば、ウレタンの一種なんだと思いますが、どういうポリウレタンなのか、詳細は不明です。
もちろん、形あるものは未来永劫その形状を保つことはありませんし、ペンは実用品ですから、使うことでどんどん変化するのは当たり前のことです。どこまで許容するかはその人次第ですが、使い込まれた道具には使い込まれた道具なりの魅力があるとは思います。
ペンの先端と後端はこんな感じ。
シャープな口金が印象的です。あまり似たペンは知りませんが、あえていうと、オレンズとかZOOM707に似ている気がします。
クリップは金属を折り曲げて作ったような構造です。
正面から見ると、根元がかなり細いのが特徴的です。割と華奢な見た目ですが、クリップとしては普通にしっかりしています。
ノックボタンは独特な逆円錐状です。画像で見るとちょっと違和感がありますが、実際に手にするとそれほど違和感はないです。ポキッと折れそうな感じもしますが、おそらくそういうふうにはならないように材料選定していると思います。
円錐状の部品を引き抜くとこんな形状です。
消しゴムは実装されていません。
大人の鉛筆と似た方式ですね。
全体的にあまり似たペンを私は持っていません。あえていうなら、ジェットストリームプライムの回転繰り出し式がちょっとだけ似ています。リミテッドエディションは表面にソフトな感じの傷回復塗装が施されているのでそういう意味でもちょっと似ています。ただ、ジェットストリームの塗装は光沢タイプです。
基本的なスペックですが、重量は12.2 gで長さは142 mmでした。太さはグリップあたりでφ 9 mmくらいです。公式には重量は12.3 g、寸法は11.8 mm x 139.9 mmです。私はペンの長さは芯が出た状態で計測しますのでちょっと長めになります。あと、ものさしを当てて目分量で計測しているので1 mm程度の誤差はあります。ちゃんと測ればそんなに誤差があってはいけないんですけど。
軸の材質は樹脂で重量は数値としては軽めですが、程よい重量感があります。
バランス係数は約0.5で重心はほぼ真ん中でした。
あくまでも私の主観ですが使いやすいペンは長さが145 ± 5 mm、太さがφ10 ± 1 mm、重量は15 ± 5 g程度です。L2も短め、細めながらもその範囲に入っています。もちろん、これから外れると必ず使いにくいわけではありませんが、ちょっと特徴があるペンといった印象が出てきます。
芯の繰出量はノック10回で約5 mmでしたので、0.5 mm / ノックとなります。これはぺんてるが定める0.5 mmのシャープペンシルの繰出量と一致しており、非常にいい設計だと思います。この繰出量だと2ノックで書き始め、繰り出した芯の半分が減ったくらいのタイミングでワンノックすれば芯の繰出量のアスペクト比が1:2を超えることがありません。もちろん、0.4や0.6だって大差ないわけですが、ワンノックあたりの繰出量が多いシャープペンシルは実際に使ってみると使いにくく感じます。
口金にガイドパイプはありませんが、ペン先が細いので視界は悪くありません。口金が黒いので細い口金の先端で書いているような感じがします。
細い尖ったものを紙面上で走らせる感じというか、なんかうまく説明できませんが、クセになる新感覚の筆記感です。HBくらいの硬めの芯でサラサラと書くのが似合っていると思います。
塗装がサラサラしているにも関わらずある程度のグリップ感があること、面取りされた3面の小さな平面が親指や中指にあたることで安定感を生み出しています。かといって、必ず親指や中指にあたることを強制しない程度の平面であるため、堅苦しい感じもしません。
このペン設計は秀逸です。変わった形のノックボタンも、これが円柱だったら違うペンになりますし、口金がよくある円錐形だったとしても違うペンになると思います。それぞれの部材の形状がベストな形状なのかは私にはわかりませんが、それぞれの形や素材を組み合わせることで、ZOOM L2という個性的でベストなバランスを生み出しています。何かが欠けても、何かを付け足してもこうはならない。このデザインにはそこまで突き詰めて考えられた何かを感じます。
ちなみに、什器には小冊子とカードがありました。小冊子にはウェブサイトにはないコンテンツが含まれていておもしろいです。