rotring マルチペン フォーインワンをUV樹脂処理してみました(その2)

先日は口金のガタをUV硬化樹脂で取りました。

しばらく使っていてもう一か所気になる点が出てきました。それは何度もリフィルの出し入れをしていると、キャップが浮いてくることです。ノックするときに引っかかる感じがするなぁ・・・と思ってキャップ部分を観察すると、浮いたキャップの端面がペンの後端の端面に引っかかるような感じになっていました。このままだといつかキャップを無くしてしまいそうです。

キャップのハメアイ部を観察してみます。

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この部分を拡大観察します。

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部分的に少し盛り上げたような構造になっています。どうやって作ってるのかはわかりません。わたしだったら表と裏に金型を押し当てて、圧力を掛けることで形状を作ると思います。

つまり、下のような金型で金属板を挟み込むようなイメージです。ただの円弧ではなく、入り口に少し直線部分を作ってます(なんとなく)。

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プレスすると金属板はこうなります。

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実際は金属板ではなくて金属の円筒ですので、金型の下側は円筒状に作る必要があります。ラジオペンチの先端にこのような金型構造を作って、深さ方向の位置決めを作っておけば、筒に金型を差し込んで手でグッと掴むだけでこのような加工ができるようになるでしょう。大量生産の場合は機械化すればいいですね。

ただ、ロットリングのはなんかヤットコみたいな道具で金属円筒をつまんだだけのような粗い仕上がりなのが気になります。

一方、例えばグラフギア1000がどうなってるか観察してみましょう。

下の写真はグラフギア1000のキャップです。

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この部分を拡大して観察してみましょう。

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ちょっとボケてます。キャップの内部からルーペで観察してみると、外側の光が内側に漏れている様子がわかりますので、若干切断されていることがわかります。つまり、上から4枚目の手書きイラストのような状態に近いと思います。ちょうど板バネが内部に挿入される円筒と当たるような構造ですね。よく見ると凹部の塗装が部分的にだいぶ剥がれていることから、キャップ成形、塗装後にこの構造が加工されたことが推測できます。25年前に購入したスマッシュもだいたい同じような構造になっていますので、ぺんてるはこの部分の締結力をこのような構造で達成する設計指針なのでしょう。

ここまで来ると他のメーカーはどう考えているのかが気になります。

パイロットのS3のキャップ。

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この部分を拡大観察してみましょう。

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ぺんてるとはまた違う構造でおもしろいです。

キリがないのでこのくらいにしますが、uniはまたこれと違う感じです。

モノは丈夫できれいでじゃなければいけないというのがわたしの信念です。また、プロダクトはシンプルじゃないといけません。機能のために複雑になるのはある程度は仕方がありませんが、無意味な複雑さは必要ありません。道具は芸術品ではないですから、それでいいんです。そうしないと高くなるし、壊れやすくなるからです。もちろん、若干のブレや嗜好が入り込む余地がないとおもしろくないです。その辺のバランスをどう取るかが腕の見せ所でしょう。

ロットリング フォーインワンのキャップが外れやすいのは設計・加工がいまいちだからというのがわかりました。フォーインワンのキャップは中に小さな消しゴムが入っているだけであり、実質的にはあまり必要のない部品です。接着剤でくっつけてもいいんですが、それはさすがに嫌なので、件のUV樹脂処理をしてみました。

どこにどのくらい盛るかが難しいところですが、UV樹脂は剥がすことも可能なのでとりあえずエイヤッとやってみます。

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イメージとしては入口からなめらかに盛り上がり、曲線を描くように端面を薄くするイメージです。結果的に厚みは0.1ミリメートルくらいの盛り上がりができました。結果的にこれで十分な締結力が得られるようになりました。剥離することもなくいい感じで機能しています。

何度か出し入れした後、写真を撮ってわかったんですが、円周上に白い筋が入っていることがわかりました。これは設計上意図してできた筋ではなくて、おそらくキャップを深絞りで加工する際の金型のクセみたいなもので部分的に若干筋が入ってしまっているのかもしれません。

文房具系のブログや動画を見ると、ペンのガタを取る際にテープ類や紙などを使用している例が多いです。手っ取り早い道具なのはわかりますが、自由度が低いのが気になるところです。その点、UV樹脂は加工に自由度があります。ちなみにUV樹脂は100円ショップにも売ってますし、UVライト自体は2000円もしません。

実はフォーインワンの印刷が剥がれそうなのが気になっていて、UV樹脂でコーティングすることを考えています。適当な樹脂キャップで練習した後、モノグラフシャープペンシルで試してみました。あと、コーティング剤として爪用のクリアのマニキュアを選定して試してみました。どちらも光沢感が他の部分と異なるので、若干違和感が出てきます。もっと薄くて硬いコーティング方法はないものですかねぇ。100均や手芸店のジェルネイルのコーナーをうろついているおっさんがいたら、それはわたしかもしれません。笑

 

 

TWSBI DIAMOND580にインクがなじんで書き味が変わった

TWSBI DIAMOND 580(F)にLAMYのブルーを入れてほぼ24時間が経過しました。洗浄してインクを入れた直後はガリガリ感の残る筆記感だったのですが、今は以前通りの滑らかさに近い状態になりました。

わたしは万年筆を洗浄してもキッチンタオルでニブから水を吸い出すだけで、乾燥させません。単純に面倒だからです。おそらくそのせいだと思うのですが、洗浄直後は万年筆の書き心地やインクフローが悪くなりがちです。以前も書きましたが、一晩くらい置いておけば書き味は落ち着きます。

下にTWSBI DIAMOND 580(F、インクLAMYブルー)とPILOT PRERA(F、インク 色彩雫 月夜)の筆跡を示します。

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TWSBIの筆跡は少し太くなったような気がしますが、通常筆記として使いやすい太さです。もう少し太くてもいいくらいですが、台湾で試筆したMは結構太かったです。ただ、インクフローがよくすごくなめらかに筆記できたので、それはそれでおもしろいとは思います。

TWSBIの万年筆には分解工具が入っていて、すでに2,3回、分解してみました。きちんとメンテナンスしてあげれば、劣化するのはゴムパッキンくらいですが、手に入れることはできるのでしょうか。

ペンクリップ、邪魔なら外すという手もあります

いわゆる製図用と呼ばれるシャープペンシルのクリップは取り外せるようになっています。

下の写真は0.7ミリと0.5ミリのスマッシュです。

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スマッシュは25年ほど前、大学の時に売店で見つけた0.9ミリを使い始めたのがきっかけです。当時、「本の雑誌」に広告が出ていました。買った日のことは今でもよく覚えています。0.9ミリはどこかに失くしてしまい、今手元にある0.7ミリは二代目か三代目です。0.5ミリ以外は販売中止になってしまったので、今となっては貴重品とも言えますが、不幸なことにこの0.7ミリスマッシュは一度洗濯されてしまっています。相当酷使されたせいかクリップは外した記憶はないのですが、もうありません。

でも、このクリップを外した状態のスマッシュはすごく使い勝手がいいです。スマッシュはグリップがボコボコしていて割と転がりにくいです。持ち運びに不便がないなら、わざと外してしまうというのも手です。スマッシュはそれほどクリップが邪魔になるシャープペンシルじゃないので気にならない人も多いでしょうが、あるのとないのとは結構大きな差があります。

今となっては使用頻度が低いとはいえ、20年くらい経過した今でも全く機能的に問題はありません。グリップの弾力も失われていません。ただ、ノックの部分の蛇腹のゴムは固くなってボロボロに割れています。高校から大学1年のころまではずっとDRAFIX(DM5-300)を使っていて(特に何も意識せずにずっと使っていました)、スマッシュはその次に買ったシャープペンシルです。実は高校入学まではずっと鉛筆のハイユニを使って勉強していていたので、DRAFIXがおそらく最初に購入したシャープペンシルだと思います。つい最近までは手元にあったのですが、いつしか無くなっていました。

この下のブログの辺りまではあったんですけどね。

 

digistill.hatenablog.com

 このブログにはステッドラーの925 85-07(いわゆるREG)も写ってますが、これもどこかに行ってしまって見当たりません。こちらは新品が2万円程にまで高騰しています。しかし、正直いってこのシャープペンシルのローレットは全く好みに合わずほとんど使った記憶がありません。よくみるとカラーフライトもTUFFもGRAPH1000 Limitedもないです。もしかしたらどこかにしまい込んでしまっているのかも。

ぺんてる GRAPHGEAR1000の中を観察してみたら設計者のこだわりが明確に伝わってきた

( 今回のブログはちょっと説明が雑なため、現物が手もとにないとちょっとわかりにくいと思います。)

グラフギア1000はペン先を収納することができる製図用のシャープペンシルです。構造上、シャープユニットと口金が衝突してカチャカチャと音がしそうなものですが、ほぼその違和感はありません。相当精密に口金を作り込んでいるに違いないと思いきや、シャープユニットの先端をつまんで動かすとそれなりに隙間があることが感じられます。(決して精度自体は低いわけではないです)

中がどうなっているのかちょっと観察してみました。

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シャープユニットを筒に入れ、黒い樹脂をねじ込むとき、黒い樹脂部品がバネの端面に当たります。ねじ込む前からテンションが掛かっていますので、ねじ込むと結果的に結構な力でシャープユニットが軸の後端に押し付けられる形になります。この状態ですね。

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この状態ですでにシャープペンシルとして十分機能します。細いですが掴んで筆記すると普通に書けます。通常の筆圧程度ならグラグラもしません。

つまり、グリップと口金は「おまけ」というわけではないですが、添えられたような状態なんですね。カチャッという音は剛性のない棒状の何かが、筆記時の接触速度で口金に当たることにより発生する音です。グラフギア1000はシャープユニットが軸そのものに高い剛性で固定されているため、ほとんど動かないのだと思います。グラフギア1000はカチャッという音をさせるのは至難の業というか、どうやっても鳴らないです。

ところで、シャープユニットを収納するとき、芯は引っ込めておくべきでしょうか。

基本的には芯は収納したほうがいいでしょう。しかし、グラフギア1000はシャープユニットを収納すると、芯とチャックが緩みます。なぜそうなるか。一枚目の写真のシャープユニットを見てください。グレーの部品はさっきも言ったように、黒い樹脂でバネを介して軸後方に押されているため、軸の後ろ側に動こう動こうとしています。筆記時にはクリップで強制的に後方へ動く力をある場所で制限されます。その状態でノックすると、白い樹脂部品がグレーの樹脂部品に挿入され、結果的にノックされる仕組みです。

では、クリップの締結力を解除し、シャープユニットを収納するとどうなるか。グレーの樹脂部品はバネに押されるような形で白い樹脂にバネの反力で押し込められようとします。このバネ反力がノックの力よりも強いため、シャープユニットを収納すると結果的にノックされたような状態になってしまうんです。

ですから、下の写真のように過剰に芯を出した状態で、

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ペン先ユニットを収納すると、こうなります。

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この状態はすでにノックされるような力が掛かっています。

ですから、下の写真のように紙に押し当てるだけで、

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芯はスッと引っ込みます。

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この状態でおもむろにシャープユニットを繰り出すとこんな感じになります。

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ちょうど3ノック分、つまり、1.5ミリメートルほどが出ているのがわかります。

ぺんてるのシャープペンシルは、筆記時に2ノック(1ミリメートル)程度で筆記することが想定されています。

pentel.blog.jp

普通の感覚だと半分以下の0.5ミリメートル程にならないと新たにノックすることはないでしょう。仮に0.5ミリメートルの芯だし状態からワンノックすると+0.5ミリメートル足されるわけですからちょうど1ミリメートルになります(ぺんてるのシャープペンシルは1ノックできっちり0.5ミリの芯が繰り出されるように設計されています)。つまり、通常の使用状況においては芯をシャープユニットにわざわざ収納しなくてもペン先から芯が飛び出すことはありません。

しかも、上にリンクした「シャープペン博士のディープ講座 【Lesson 2】「シャープペンにメンテナンスがいらない理由」」を読むとわかるのですが、ノックしっぱなしの状態はチャックが開きっぱなしになった形であるため、チャックにテンションが掛かっておらず、チャックにとってはいい状態なんですね。逆に芯を咬ませていない状態だと、チャックを必要以上に中心に変形させようとするためチャックにとって負担がかかるということが書いてあります。ちなみに、チャックの構造は下のリンクを見てください。ちょうど筒を3分割にしてラッパが開いた状態がリリースされた状態です。

pentel.blog.jp

これを設計した人は相当こだわって設計してますね。グラフギア1000のこだわりにちょっと感動しました。

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ちょっと追記

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シャープユニットを収納しても厳密にはノックされるほどの力はないように思います。というのも、もし収納してノックされているなら、収納するだけで芯が出るはずです。しかし、芯が出ていることはありません。どういう状態になってるのかよくわかりません。

ぺんてる シャープペン グラフギア1000 PG1015 0.5mm

ぺんてる シャープペン グラフギア1000 PG1015 0.5mm

 

 

今日のペンケース

これまでは少し万年筆に偏りがちでしたが、改めて整理しなおしてみました。

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左から

  • アルスター(ボールペン)
  • サファリ(シャープペンシル)
  • サファリ(万年筆)
  • オルファカッターシルバー
  • SLENDY+(消しゴム)
  • グラフギア1000(0.5)
  • ぺんてるサインペン(黒)
  • ぺんてるサインペン(赤)
  • PROPUS WINDOW Q-DRY(蛍光ペン)
  • ロットリングマルチペン(3色+1)(多機能ペン)
  • マルチ8(色鉛筆?)
  • パイロット キャップレス絣(F)(万年筆)

ちなみに、スーツに合わせるのはジョッターにしてます。ジョッターくらいの感じが主張しすぎず安すぎずいい感じだと思います。見栄を張りたいなら金ぴかのM400なんでしょうけどねぇ。

実は今日、東京駅のそばの丸の内オアゾの中にある丸善でロットリング600を買おうか悩んでいました。用途的にはばっちりグラフギア1000と被ります。ちょうどロットリングの後ろ側にグラフギア1000も試筆できるようになっていたので、しばらく試してみました(もしかしたら私の落書きが残ってるかもw)。ロットリング600もかなりいいシャープペンシルです。しかし、ペンケースに入れて持ち運ぶには若干不安が残ります。かといってロットリング800まで行くと高すぎます。また、グラフギア1000に目を向けると、ロットリング800と張り合えるかそれ以上の実用性を備えています。正直、かなり気に入っています。高級感を取れば持ち運びシャープペンシルはロットリング800でしょうね。しかし、しばらくはグラフギア1000を使ってみます。

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