TIMO DXとPAS CITY-SP5のGD値について考える

先日、電動アシスト自転車を購入する際に迷った車種として、パナソニックのTIMO DXとヤマハのPAS CITY-SP5を挙げました。主な特徴は以下の通りです。

  1. 電動アシスト自転車
  2. シティサイクル(いわゆるママチャリタイプ)
  3. 27インチ
  4. 内装5段

まずは外観を紹介します。

TIMO DX

CITY-SP5

さて、自転車の世界にはGD値という値があります。どういう数値かというと、ペダル一漕ぎで自転車が何メートル進むかという数値のようです。

ここで、意味を考えながら、ギアの歯数と変速機のギア比、タイヤの直径から、ケイデンス60時の時速を求める式を作ります。

興味がなければ青字は飛ばしてください。

ペダルについているギアの歯数をAとしてリアのギアの歯数をBとすると、A/Bがペダルが一回転した時にリアのタイヤが回る回数になります。

変速機がついた自転車の場合、変速機のギア比も考慮しないといけないので、変速機のギア比をCとするとA/BxCがペダルが一回転した時のタイヤが回る回数になります。

GD値はペダル一漕ぎで自転車が進む回数でしたから、上で求めたA/BxCにタイヤの円周の長さを掛ければGD値ということになります。

タイヤのサイズは直径で表現されることが多いのでそれをDとすると、円周はπDとなります。

以上より、

GD値=A/BxCxπD

([フロントギア数] / [リアギア数] x [変速機のギア比] x [円周率] x [タイヤの直径])

と表現されます。ここでは単位としてメートルを使います。

まとめると、

GD値=πACD/B

ということになりますが、上の式の方が計算のイメージがつかみやすいと思います。

また自転車の世界で使われる言葉の一つにケイデンスというものがあります。単位はrpmなので、一般的な回転数と同じです。rpmはrevolutions per minuteとかrotations per minuteの略で、平たく言えば、1分間あたりの回転数のことです。ここではケイデンスをKと表現することにします。(注意:ケイデンスの英語表記はcadence)

シティサイクルの場合、50~70rpmくらいが一般的なようです。ここでは真ん中の60rpmを考えます。

60 rpmのイメージをつかみやすい動画は以下の通り。


www.youtube.com

GD値にKを掛けた[GD]xKは1分間あたりに自転車が進む距離になります。1時間だと60[GD]Kとなります。この単位はメートルだったので、これを1000で割るとkm/hに変換できます。

以上をまとめると、

A/BxCxπDx60/1000 [km/h]

となります。

この式は前後のギアの端数と変速機のギア比、タイヤの直径から、ケイデンス60時の時速を求める式になっています。

これを用いてTIMO DXとCITY-SP5を評価してみます。

ギア比はシマノのネクサス インター5のものです。

ただし、ここで注意したいのは、以下の表を作るのに使った数値がメーカーの公称値ではありません。ネット上で調べた数値を参考に、推測した値を使ったりもしています。よって、本来の数値とは少し違う可能性もあります。(いくら調べてもTIMO DXのギア数がわからなかったので、実は、今日、自転車屋にギア数を数えに行ったんですが、外からではうまく数えられませんでした。汗)

まずTIMO DX。

表1

次にCITY-SP5。

表2

まず、5速での速度を見てみましょう。TIMO DXが時速20キロメートル、CITY-SP5が時速24キロメートルです。同一ケイデンスでより早く走りたい場合はCITY-SP5が有利です。

日本では電動アシスト自転車は法律上、時速24キロメートル以上の速度域ではアシストされません。

参考までにヤマハのウェブサイにあるヤマハの電動アシスト自転車の速度とアシスト力のグラフを見てみましょう。

イメージ

内装3段のイメージのグラフなんだと思いますが、実線のグラフを見ると1速の場合、時速9キロメートルくらいからアシスト力が弱くなり、時速14, 5キロメートルくらいでアシスト力がゼロになります。2速、3速では速度が上がるにつれてアシスト力が弱くなり、時速24キロメートルではアシスト力がゼロになっていることがわかります。

私の実感だと内装3速のヤマハの電動アシスト自転車の場合、時速15~17キロくらいまでが楽だなぁと感じる領域です。もちろん、がんばれば時速20キロ以上を出すことも可能ですし、20キロオーバーくらいまではなんとなくアシストだからスピードが出しやすいのかなとは感じますが、楽に走れる感じはありません。もっとも、人と並走する道路で時速20キロメール以上で走るのは危険です。

ケイデンス60で考えれば、ということにはなりますが、パナソニックのTIMO DXはアシスト感を残したGD値になっている一方、ヤマハのCITY-SP5はより速く走行することを重視していることになります。CITY-SP5は、より低いケイデンスでより速く走れるようにしている(ハイギアードな設定)と言い換えてもいいかもしれません。

 

次に私が普段よく乗っている変速機なしのシティサイクルのGD値を計算し、両車種とのGD値と比較してみます。

フロントの歯数は32T、リアが16Tです。タイヤサイズは27x1 3/8なので、キャットアイのサイクルコンピュータの取説にある表を参照すると、周囲長は2.17メートルです。よって、GD = 4.34。ちなみに、ケイデンス60rpmの時の速度は時速約15.6キロメートルです。

表1、2を見るとこのシティサイクルのGD値はおおよそTIMO DXの3速、CITY-SP5の2速に相当します

私が乗っている変速機なしのシティサイクルを一つの基準とすれば、TIMO DXは3速が基準であり、CITY-SP5は2速が基準となっていると言えます。

 

次に上り坂を登るという視点からGD値を見てみます。

「神川輪業ブログ」の「坂道を楽に、平坦を速く」*1という記事を参照すると次のような表現がありました。

ここ垂水区では、通勤、通学、買い物用途なら重い方ギヤで500Cmもあれば十分なので
軽い方のGD値を300cm以下にしたいところですね。

Googleマップを見ると丘陵地が点在したような地域のようなので、そこそこ坂道が多い地域のようです。平地はほとんどが住宅地になっていて、人の往来も多いと思います。つまり、そんなに速度が出せる地域でなく、かつ坂道もあるという感じでしょう。

TIMO DXの1速のGD値は2.71メートル、CITY-SP5のGD値が3.24メートルなので、アシストの特性にもよるんだと思いますが、坂道を重視するならばTIMO DXが有利と言えるでしょう。

 

もうひとつ、自転車のギアに対する負担という意味ではGD値が小さめのTIMO DXが有利だと思います。

 

GD値はタイヤの直径と変速機が同じなら、フロントとリアのギアの歯数で全て決まります。坂道を重視するか、速度を重視するか(ただし、アシストがほとんどない状態でがんばる必要あり)で適した自転車が変わると思います。

 

まぁ、そこまで考えなくてもどっちも普通に乗れると思いますが、こういう見方をしたら自転車選びもちょっと楽しいかもということで、一例を示してみました。

個人的には広島市内は平地が多く、変速機なしでも移動に苦労はないので、電動アシスト自転車ならハイギアードなCITY-SP5でも普通に乗りこなせると思います。

ただ、比較するとTIMO DXの方がどうしてもかっこよく見えてしまうんですよね。フロント部分の平行四辺形の形やリア上側のなだらかにカーブを描いたフレーム形状、荷台のリンク部分のカーブなど、直線と曲線がいい感じでバランスよく配置されています。

若干、車軸間距離もTIMO DXが長く(TIMO DX: 1180 mm、CITY-SP5: 1155 mm)、ゆったりと乗るのに安定感がありそうです。また、タイヤの幅がTIMO DXは1 3/8インチでCITY-SP5は1 1/2インチです。TIMO DXのタイヤが少し細めです。センチメートルで表現すると3.5センチメートルと3.8センチメートルとわずかですが、見た目の印象はだいぶ違います。タイヤの種類にもよるのかもしれません。もっとも、27インチという大きめのタイヤや長い車体は小回り重視では不利です。小回り重視ならPAS CITY-XやCITY-Vがいい感じです。

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