2022年の忘年筆はザ・ドクターグリップのつもりでした。
しかしながら、今日、多山文具に立ち寄ったときレジ前で見つけた「ステッドラー ヘキサゴナル Limited edition」が忘年筆になりました。型番は925 77-05Lです。
色は限定色のVersion-0で、鉛筆のマルスルモグラフと似たようなカラーリングとなっています。
このようなかっこいいパッケージに入っています。
「鉛筆メーカーが本気で作ったメカニカルペンシル」と書いてあります。
全体を少し観察してみます。
まず、軸は鉛筆のような六角形になっています。普通の鉛筆は辺と辺の距離がおおよそ7 mm程度ですが、ヘキサゴナルは8 mmになっていて、少し太めです。
黒鉛系の筆記具の場合、筆記時の芯の片減りを防ぐためにペンを回しながら書くことがありますが、六角軸は回す量が定まるので都合がいいです。
軸は金属製(主にアルミニウム)で剛性感があります。表面にはラバー塗装が施されており、しっとりとしたグリップ感があります。
スタロジーのシャープペンシルが似たようなラバー塗装仕上げになっています。スタロジーは軸がプラスチック製ということもあるのか若干グリップ感が強めです。
この手の塗装は購入時のきれいさを保つことは難しいと思いますが、簡単に全部剥がれ落ちることはないと思います。ベースが金属なので硬度差があるため、もしかしたらヘキサゴナルの塗装は若干落ちやすい可能性はあります。しかしながら、それも味と思って楽しむくらいがいいと思います。
ヘキサゴナルは基本的には製図用シャープペンシルであり、ガイドパイプの長さは4 mmになっています。
クリップにはマルスヘッドの刻印がなされています。クリップ位置が比較的高いため、手への干渉はしにくいです。
ノック部に芯の硬度表示窓があります。3Bから2Hまで対応しています。初期芯はBになっています。高度表示窓の動きはスムーズで適度なフリクションがあり、不意に動くことはほとんどないと思います。
注目すべきはキャップに実装されたOリングです。
シャープペンシルはこの部分がガタ付きやすい構造になっているものが多く、特に金属製の場合、音が気になることがあります。しかしながら、このような構造があると軸と内筒の直接的な衝突が避けられるため音を抑制することができます。実際、この設計はうまく機能しています。
似たような構造はプラチナのプロユース(通称ツチノコ)にも見受けられます。この場合、キャップでなく、内筒にOリングを配置していますが、効果は同じです。個人的にはこのような機能部品は隠れていた方がいいと思うので、プロユースの設計の方が好きです。
ちなみに、Version-0にだけキャップにこのような印刷が施されています。
消しゴムは珍しく茶色です。
消しゴムには金属部品がなくただの細長いゴムです。
しかし、ゴムを差し込むと軽微なクリック感のような感触があります。
この感触はなんだろうかと内部を観察してみると、消しゴムを入れる筒の内部に段差が加工されていることがわかりました。この段差をゴムが通る時にクリック感のような感触があるようです。おそらくこれにより消しゴムの抜け落ちを防止しているんだと思います。
消しゴムを観察すると左側にうっすらと線状の跡があることがわかります。
非常に細かいところまで配慮が行き届いた設計になっているのがわかります。
芯チャックは比較的大型の金属製です。
芯の繰出量を調べてみました。10回ノックした時の芯の繰出量が約7mmでしたので、ワンノックで0.7mmです。0.5のシャープペンシルの場合、ワンノック0.5のものが多いので、繰出量は若干多めと言えます。
ノック感はそれほど良くはなく、普通です。
重量は17.7グラムで、程よい重量感があります。
バランス係数([ペン先から重心までの距離 / 全長])は70/ 146.5 = 0.48で、重心はほぼ真ん中あたりです。あえて低重心にせずに鉛筆っぽさを残した設計にしてあるのかもしれません。
見た目は全然違いますが、サイズ感や重量がパイロットのS20によく似ています。ちなみに、S20の重量は18グラムです。
ヘキサゴナルは余計なギミックなどはなく、ただただ普通のシャープペンシルですが、丁寧に設計製造された完成度の高い仕上がりになっています。
税込2970円と若干高いですが、ちゃんとしたシャープペンシルが欲しいと思った時に選ぶ価値のある一本になっていると思います。