キュリダスのペン芯が割れる?

最近、ブログとかTwitterでキュリダスのペン芯が割れる事案が報告されているようです。ニブをかしめた部分が割れている事例が多く、中にはペン芯がど真ん中で縦にひび割れている事例も見られました。

私は2月12日にキュリダスを買いました。おそらく初期ロットのものです。ペンケースに入れて毎日持ち歩いて使ってます。ほとんどボールペン感覚です。デスクのカレンダーに書き込んだりしてもボールペンのように空気が入る心配がありません。正確に言うと万年筆は空気が入って書けなくなることがありません。むしろ普通に書いても、空気が入る設計になってます。もちろんインク供給のないまま長時間逆さまに書けば書けなくなるでしょう。わたしのキュリダスはEFで細いので、手帳などにも重宝しています。長時間使い続ける事は少ないですが、ちょこちょこ頻繁に使っています。

書き心地はパイロットのキャップレスがいいですが、気軽さはキュリダスの方が上です。個人的にはどっちも好きです。書き味を求めたら間違いなくキャップレスですけどね。キュリダスのポップで気軽な感じも好きです。

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さて、ペン芯をさっそく拡大して観察してみたのですが、割れはありませんでした。

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ただ、言われてみれば、ペン芯の真ん中辺りが引けてるように見えます。樹脂の射出成型をするとき、厚い部分と薄い部分を同じ部材に設計すると、熱収縮の量が大きい厚い部分の表面が凹むことがあり、そういう部分のことをヒケといいます。そういうヒケに見えます。この凹みが曲げ応力によって肉薄部分が曲がっているものだとしたら、ここから折れる可能性はあるように思います。射出成型は、加熱して流動性を持たせた樹脂を高圧で金型に射出し、冷やすことによって、形を作ります。溶けたものを決まった形に流し込むだけのことですが、金型設計(材料をどのように金型に入れるかとか)、金型温度、材料の乾燥具合、圧力の加え方や冷やすタイミング等、結構制御すべきパラメーターがあります。それらがうまくかみ合わないと結構いろんな不良がでます。

さらに観察してみましょう。次の写真はペン芯のカシメ部分を横から見たものです。

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なぜかカシメを受ける部分の樹脂が薄く成型されています。こりゃ、カシメ時の応力が大きかったら折れるわなぁ、、って感じの設計ですね。壊すのが嫌なので分解するつもりはないですが、どんな形状なのか気になります。

わたしはモノは常識的な使い方をする限り簡単に壊れてはいけないと思っています。もちろん、使う側の節度は大切ですが、7000円の万年筆を万年筆として使って、数ヶ月で壊れるようじゃそれは万年筆とは言えないと思います。

幸いわたしのは壊れてないですし、これから使い方を変えようとも思ってません。

さて、この事案、どの程度の事例が発生してるのでしょうか。そして、その原因はなんでしょうか。

おそらく、設計ミス、材料選定ミス、成型不良、組み立てミス、いずれかか、その複合でしょうね。ペン芯は万年筆にとって重要な部材のひとつです。もし多数破損事例が出てるとしたら、メーカーの技術者はもっちょっとしっかりとした検証をするべきだったでしょうね。まぁ、真相はまだ、わかりませんが。

Vコーンがノック式になった!「Vコーンノック」

「あの」Vコーンがノック式になったようです。

www.pilot.co.jp

でも、ちょっと待てよ・・・パイロットにはVボールというノック式の水性ボールペンがもともと存在するわけですよ。

www.pilot.co.jp

もしやと思い、リフィルを確認してみたら、どっちも「LVKRF-10EF」「LVKRF-10F」でした。つまり、Vボールの軸違いってことですね。ていうか、よく見ると、形もほぼ同じっぽい。

Vボールも便利で好きなのですが、Vコーンとは根本的に書き味が違います。Vボールはどちらかというとゲルボールペン寄りかなぁと感じます。Vボールは昔ながらの水性ボールペンで、この筆記感が好きなんだって人は好きだと思います。Vコーンノックはそれとはちょっと似て非なるものかなと思います。違いが判らない人はわからないかもしれませんが、その辺は人によるでしょう。

 

 

 

 

ニトムズ スタロジー014 シャープペンシル

以前、スタロジーの油性ボールペンのことを書きましたが、今日は、シャープペンシルを買ってきました。

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芯径は0.5 mmで、ダブルノック式です。口金は一般筆記用ですね。

ボールペンと並べてみましょう。

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そっくりです。

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特徴的なのは最初からクリップがないことです。転がり対策などはありません。丸軸なのでひたすらコロコロ転がります。

メカはこんな感じです。

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口金にシャープユニットをねじ込むちょっと変わったタイプの構成になっています。ロットリングのシャープペンシルがこのような設計になっています。

重心は低く、全体がラバー素材なので、グリップ感も良好です。ボールペンもそうなのですが、スタロジーのペンは低重心ながら尻軸側にも重量が集まっているので、独特の安定感があります。軸径はぴったり10 mmで程よい太さだと思います。

筆記時のガタツキなどはなく、書き心地もいいです。パッケージには明記はされていませんが、芯クッション機能が実装されています。ウェブサイトではこの機能について、ちゃんと明記されているようです。

若干、キャップと軸がぶつかる音がするので、気になる場合は、テープを巻くなどの対策が必要です。3MのPPテープを2,3巻したら音はしなくなりました。

このシャープペンシル、地味ながら、一般筆記用としての完成度は非常に高いです。グラフ1000とかスマッシュより書きやすいかも。

同じ売り場にスタロジーのマルチペンも売っていました。0.5 mmタイプだったのでかわなかったのですが、0.7 mmタイプはちょっと欲しいと思っています。普通、マルチペンのシャープペンシルは0.5 mmの場合が多いんですが、スタロジーのマルチペンはボールペンが0.7 mmだとシャープペンシルも0.7 mmなんです。シャーボで0.7 mmシャープユニットは使っていますが、デフォルトで0.7 mmのシャープユニットが実装されているペンというのは聞いたことがありません。

 

 

 

ニトムズ STALOGY 多機能ペン 低粘度油性 0.7mm ブラック S5706

ニトムズ STALOGY 多機能ペン 低粘度油性 0.7mm ブラック S5706

  • 発売日: 2018/02/22
  • メディア: オフィス用品
 

 

ウェーバリーのインキを月夜からブルーブラックへ

カスタムヘリテイジ912のウェーバリーはお気に入りの万年筆のひとつです。

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パイロットの万年筆では最もスタンダードな10号ニブももつベスト型の万年筆です。

ウェーバリーというのはペンポイントが少し上向きになったタイプのニブになります。

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形状は少し特殊ですが、至って普通の書き味です。ニブが反っているので常に筆記角度を小さくしたような感じになります。また、筆記角度による筆記線の変化も小さく、クセがありません。フォルカンのように筆圧によってあからさまに線が太くなったりもしません。

最初は指の腹で書いているような感じが独特と感じるかもしれません。

パイロットの万年筆は少し筆圧を入れるとインクフローが良くなりメリハリが付くような設定になっています。

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上が軽く書いたもの、下は普通の筆圧をかけたものです。

最近は普通紙を日常的に筆記用紙として使うことが多いのですが、色彩雫の月夜だと滲みが気になります。そういうわけでインキ(パイロットではインクをインキと表記します)を純正のブルーブラックにしました。パイロットのブルーブラックはプラチナのブルーブラックと違って、普通の染料インキです。酸化によって黒が濃くなったりはしません。染料インキは耐水性がほとんどなく、水にさらすと筆跡がほとんど見えなくなるものもあります。そんな中でも、パイロットのブルーブラックは割と筆跡が残ります。また、割と滲みにくいです(濃縮されると少し滲みやすくなります)。

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この普通のブルーブラックもなかなかいい色ですよ。

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30mlで400円と、コスパも魅力です。

 

 

プラチナ ブルーブラック

プラチナの万年筆はいくつか持っていますが、現在、日常的に使っているのは主に3本です。♯3776センチュリー 中字、プロシオン 中字、キュリダス 極細です。プロシオンには純正の顔料ブルーを入れていますが、他の二本には純正のブルーブラックを入れています。

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数日放置したキュリダスのインクの色がかなり変わっていることに気が付きました。

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上:キュリダス、下:♯3776センチュリー

以前も書きましたがプラチナのブルーブラックは染料インクですが、いわゆる古典インクとか没食子(もっしょくし)インクと言われるものです。詳しい説明は省きますが、インクの成分が次第に黒く変化するインクです。本来、ブルーブラックインクとは書いてすぐは筆跡が鮮やかなブルーを示しますが、次第に成分が黒変し、ブラックっぽい色に変化するインクのことです。最近のブルーブラックインクの多くは、最初から黒っぽいブルーのインクことを指すことが多いようです。古典インクの良さは単に変化する色を楽しむというよりも、耐水性が高いことが挙げられます。染料インクは発色の良さや色の鮮やかさから使いやすいインクなのですが、耐水性は低いです。流水などにさらすとほとんど筆跡が消えてしまうものもあります。中にはパイロットのブルーブラックのように、古典インクじゃなくても比較的耐水性の高いインクなどもあるので一概に染料インクは耐水性が低いとは言えませんが。

さて、上の違いは単にペン芯のインクが濃縮されたからなのか、酸化してインクの色が変化したのかどちらでしょうか。あるいは両方が同時に起きているのかもしれません。

ちなみに、まだドライアップする感じではないです。インクが蒸発しにくいタイプの万年筆とはいえ、古典インクを入れている万年筆は頻繁に使ってあげた方がよさそうです。

 プラチナのブルーブラックは安くて性能が良くて、しかもリザーバー付き(インクを入れる際に楽になる部品)なので使い勝手もいいです。

ちなみに、プラチナのブルーブラックの色の変化は穏やかです。すぐに黒くなってくるという実感はあまりないと思います。色の変化を楽しみたい場合は、クラシックインクシリーズがいいと思います。YouTube動画などを見ていると、みるみるインクの色が変化する様子がわかります。わたしは使ったことはありません。

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今回の話とは全然関係ありませんが、以前、ベンチャー企業でインクジェット用の特殊な顔料インクの開発をしていたことがあります。インクってなんでこんな高いんだ??と思うかもしれませんが、少なくとも顔料インクに関しては粉砕したり、不純物を取り除いたりと結構手間と時間がかかります。界面活性剤の種類や配合でできてくるインクの性能が結構変わったりするので、開発もそれなりに手間がかかります。あくまでも自己流でやっていたので、メジャーなインクの開発とはだいぶ異なることをしていた可能性もありますが。

 

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