プロフィット21の書き味が比較的固く、ざらついていると感じていたのだが、最近、それは少し違うのではないかと感じてきた。
万年筆のペンポイントをルーペで観察しながら、紙が当たるように爪の先で少しだけペンポイントを押してみると、比較的軽い力でペンポイントが開いていくのがわかる。プロフィット21やM400のような金ペンは比較的軽い力で開き、鉄ペンは少し力が必要だ。ペンポイントの大きさ(いわゆる、EF、F、Mのような)とペンポイントの形状によってもその開き方の感じは違うようだ。
全然、厳密な観察結果ではないけれど、今のところ、下の図のような感じで考えをまとめてみた。
ペンポイントが開いた状態でニブを横にずらすように線を描くと、ペンポイントの内側のとがった部分が紙に引っかかる可能性がある。縦方向に滑らしながら線を引いても、引っかかる場所がないので、比較的滑らかなままだ。
(ペンポイントの上部が下部よりも開きが多いように描いているのは、実際に爪でペンポイントを押すと、たいていそのような変形をするからだ。逆に反対側から押すと、ほとんど開くような挙動は示さない。これはニブの湾曲した形状によるものだ。厚みのある半円筒状の物体の頂点に突起を付けて、押したときにどのように変形するかを考えるとある程度理解できる。今回は図示はしない)
内側のエッジ部分を滑らかに削っておけばそのようなザラツキは感じにくいだろうが、下の図のようになることは容易に想像できる。
このような場合、少しペンを押し付けてインクを紙に付着させてあげないとインクは絶対に出てこない。ひとたびインクが付着すれば、毛細管現象によりインクは引き出される。しかし、「筆圧をかけずにペン先を紙に当てるだけで書ける」という状態にはならないだろう。このあたりの味付け具合が万年筆の個性になってくるのだと思う。
また、それなりの筆圧で書くうちにこの内側が紙によって研磨されてくると、滑らかになったように感じると思われる。筆圧が個人の固有のものだと仮定すると(時によってある程度は違うだろうが)、筆圧によりペンポイントが開いた状態で研磨が進むので、インクが紙に付着しにくい程には削れにくい。これが慣らしで滑らかに感じるメカニズムではないかと考えている。(実は、この慣らしというのが何ものなのかが知りたい)。だから、書くときに少々引っかかりがあったりする状態は、プロセスと考えるべきなのかもしれない。硬い金属が削れるまでは相当な時間がかかると思うので、それも個性と受け入れ、寛容な気持ちで受け入れることも必要だろう。当然、ペンポイントがズレ過ぎているとか、ニブが変形しているなんてのは別の話だ。
つまり、静的な状態で単純にペンポイントがなめらかに研磨されていればいいというものではない。使用時、筆記感に対して最も重要な部分が、物理的に変化してしまうからだ。この動的な要素を考えに入れないと、万年筆の状態を決めることはできない。
程度のいい太めの鉄ペンを使うのがもっとも手っ取り早く万年筆の良さを感じる方法だと思う。鉄のMニブあたりがなめらかに感じるというのはすごくあたりまえのことなのだ。ただし、金ペンの紙当たりの柔らかさやメリハリは少な目になる。
結論としては、材質やペンポイントの大きさ、形状に応じた筆記を心掛けることが大切だ。だから、プロフィット21も筆圧をかけずに筆記すると、すごく気持ちよく筆記することが可能なのだ。
細字の金ペンを快適に使いこなすのは意外と難しいのかもしれない。じゃぁ、太字ならいいのかというと、そうとも言えない。なぜなら、上の図にもあるように、万年筆はその性質上、ペンポイントの割面に存在するインクが紙に付着しないと一切筆記が不可能な筆記具であるので、太ければ太いほどちゃんとした持ち方で正しくペン先を紙に充てる必要が出てくる(と、思われる)。もっとも、万年筆というのは滑らかさを競う競技ではなく、あくまでも字を書く道具なので、目的から外れた太さの万年筆を手にしてもナンセンスだが。そういう意味からも鉄ペンのMというのはちょうどバランスがいいんだと思う。