【関数電卓】CANON F-605G

CANON F-605Gは数少ない標準入力式の関数電卓のひとつです。

標準入力式の関数電卓はF-605Gとほぼ同等性能のSHARPのEL-501Jを持っています。F-605Gの購入理由はその小ささです。

EL-501Jも十分小さいのですが、それよりもかなり小さく感じます。

数式通り入力できる関数電卓と比べるとこんなに違います。

標準入力タイプの関数電卓は簡単な計算であれば数式通りの関数電卓よりも入力ステップが少なくてすむ場合があります。

ただ、入力にちょっとコツが必要な場合があります。

例えば、こんな計算を考えます。

これは「大学生・エンジニアのための 関数電卓活用ガイド」の中にある計算方法です。この本では、このように入力しています。

これを標準入力でやろうとすると、[8] [1/x] [x^2] [+] [1] [2] [1/x] [x^2] [=] [√]となります。10回のキー入力で済んでいます。

どういう入力をしているかを説明します。

まず、8を入力し、それを逆数にしたあと、2乗します。この段階までなら、[1] [÷] [8] [=] [x^2] と打ち込んでも、問題はありません。

次に、+と入力します。ここで標準入力式の関数電卓では足すものの入力モードとなります。ここからが少しややこしいのですが、「大学生・エンジニアのための 関数電卓活用ガイド」の著者の遠藤先生のウェブサイトに「標準電卓においては,演算子が「どこで置数を終えたか」のサインになる」*1と書いてあります。続いて入力したいのは(1/12)^2ですが、ここで割り算は使えません。なぜなら、[1] [÷] [1] [2]と書いた後、この演算を終わらせることができないからです。

そこで、12の逆数の2乗をするという入力方法を採ったわけです。

あえて割り算を使うとするとカッコを使うと良いです。[+]の後に[(] [1] [÷] [1] [2] [)] [x^2]とするとうまくいきます。[)]が1÷12を完了させるための演算子になっているような感じです。でも、カッコを使うと入力する量が増えるというデメリットがあります。そして、まだ[+]の後の入力状態が続くので[x^2]キーを押すとカッコの中身が2乗されるわけです。最後に[=]が入力された時点で、関数電卓は最初に計算した(1÷8)^2に(1÷12)^2を足す演算を実施します。その後、この結果を引数にして平方根を取ると、欲しい結果が得られるというわけです。

文字で書くと、訳がわからないと思うので、実際にiPhoneの関数電卓で入力してみると、どういうことかわかると思います。iPhoneの電卓を横にすると関数電卓モードになるのは有名ですが、なんで初心者に優しくない標準入力モードなんでしょうね。

CANON F-605GとEL-501Jの液晶部分を比べてみると、F-605Gの文字が少し大きいです。視認性は同等だと思いますが。標準入力式の関数電卓は数字が7セグメント表示なので、高機能な関数電卓のドットマトリックス表示よりも数字は見やすいです。

7セグメント表示

ドットマトリックス表示


F-605Gはキーが小さく、ゴムなので入力はそれほどしやすいと言えません。

ただ、F-605Gの指数表示はEL-501Jよりもわかりやすいです。

下の写真は123456789 x 123456789の計算結果です。

F-605Gでは1.524157875の右上に小さな16が表示されています。これは1.524157875 x 10 ^16を意味します。一番右側に指数などを表示するための専用の液晶が準備されているわけです。一方、EL-501Jでは1.5241578 16みたいな表示になっています。数字の入力部分を利用して指数を表現しています。底と指数が同じ大きさの数字なのでちょっとわかりにくい上に、指数表示のために表示を消費するので表示桁も少なくなっています。

価格はF-605GもEL-501Jも1000円程度です。普通の電卓感覚で使えるので、個人的には普通の電卓よりもこういう電卓を手元に置いておいた方が便利だと思います。

最後に、「大学生・エンジニアのための 関数電卓活用ガイド」の中から複利計算の例を紹介します。

「問題:銀行に毎年3.0%の複利で80万円を預けた。これが100万円になるまでには何年待つ必要があるか」

答えはこうです。

EL-520Tのようなちょっといい関数電卓なら下のような式を作って、ソルバ機能を使ってxを求めることもできます。

数式通り関数電卓の入力例は以下の通りです。

これを標準入力の関数電卓でするとこうなります。

[1] [0] [0] [log] [-] [8] [0] [log] [=] [÷] [1] [.] [0] [3] [log] [=]

もしくは

[(] [1] [0] [0] [log] [-] [8] [0] [log] [)] [÷] [1] [.] [0] [3] [log] [=]

2番目の方が途中で=が出てこないのでスマートな気もしますが、キーストロークは1個多いので1番目の方法でいいと思います。

時々、「大学生・エンジニアのための 関数電卓活用ガイド」を使いながら関数電卓を使い比べたりしますが、なかなかおもしろいです。

最後に、今回示した例は全てiPhoneの関数電卓モードで計算できます。ですから、たまにしかこういう計算をしないという人にとって、関数電卓はほぼ必要ないと思います。60進数を利用した時間や位置計算などができなかったりと、機能上のメリットがあるということもありますが、何より、手軽さや利便性は電卓の方に軍配が上がります。

ちなみに、統計などの複雑な計算は無理やり関数電卓でやるのもおもしろいですが、実用性を重視するなら、Pythonなどでやった方がいいと思います。

 

 

 

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