uni クルトガダイブ ファーストインプレッション

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クルトガダイブがやっと来ました!うさぎや福山南店さんありがとうございました!

クルトガダイブはこの前からごちゃごちゃと興奮気味に言及しているシャープペンシルです。

このシャープペンシルの最大の特徴はノックせずに先端から芯が出たまま筆記し続けられるところだと思っています。

オレンズネロは紙面にガイドパイプが当たるとガイドパイプがスライドしてそのまま書き続けることができます。その後、紙面からガイドパイプを離すと、所定の位置まで芯を連れながらガイドパイプが伸びます。それを繰り返すことで芯がなくなるまで延々と書けるというわけです。

クルトガダイブは芯をクルクル回すクルトガエンジンの動きを利用することで、かなりテクニカルなことをしています。簡単にいえば、クルトガエンジンが動くたびに、ガイドパイプ(説明書ではパイプという表現になっています)をペンの内部に収納することで芯の露出量を確保します。

当然、パイプを収納できる量には限りがあります。では、どうするかというと、あるタイミングでパイプを初期位置まで戻すような機構が実装されています。

メーカーの技術者ならクルトガエンジンを使って、ノックなしで書き続けられる機能を実装したいと誰もが考えるはずです。勝手な想像ですが、クルトガダイブのブレークスルーは「自動で芯を出そうとしない」ってところに着目したことではないかと思います。クルトガエンジンの駆動力を利用して芯の繰り出し量を一定に保とうとすると数μ単位で芯の繰り出し量を制御する必要が出てきます。それも不可能ではないかもしれませんが、ネジの勾配を利用してちょっとずつパイプを短くしちゃおうってのがおもしろいです。それなら軸に対する相対的な芯の位置は筆記による摩耗にしかよらなくなるので、不安定な挙動がなくなりますし、過剰な制御をする必要がなくなります。

カスタマイズに対するアプローチもおもしろいです。センサー及び調整は利用者に任せると割り切ります。では、筆圧や芯や紙という外乱因子にどう対応するかが問題になってきます。一つはネジの勾配を変化させること、もう一つはサブユニットの回転速度を可変すること。しかしながら、どちらも部品の変更が必要になり、容易には実現できません。そこで次のように考えます。パイプの引っ込む速度は最大摩耗速度に合わせ部材を設計します。摩耗量が小さい場合には、パイプが引っ込まなくなるような待機時間を設ければいい。つまり、ネジが落ちない領域を広げてしまえば良いと考えます。パイプを引っ込める速度を決めるネジが二重になっているのはそれを実現するためです。

ここまでくるとあとはサブユニットの減速を実現するギア構造だったり、実装のための構造を構築していくという作業になると思います。

文房具の試作の現場は知りませんが、クルトがエンジンのギアは非常に小さいので試作が大変だろうなぁと思います。光造形の3Dプリンタなら割とうまくいくんでしょうか。ここまで小さな部品を造形したことがないし、気にしたこともないのでよくわかりません。

前置きが長くなりましたが、ファーストインプレッションです。

最初に結論を言います。

これはいいです!

まず基本的な仕様を見てみましょう。

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全体の重量:19 g

キャップ重量:5 g

軸重量:14 g

軸はABS樹脂でできていて、表面には自己修復する塗装が施されています。この塗装は以前、「ジェットストリーム プライム 回転繰り出し式シングル」で採用されていた物です。

この点に関しては、未確認情報でした。

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塗装自体に若干グリップ感があります。ジェットストリームは出張や外出の時に時々持ち出す程度でそんなにハードに使ってはいませんが、すごく綺麗なままです。使用頻度が低いですし、特に傷がつくようなこともしてないので真価はよくわかりません。色は濃いターコイズブルーで、若干ラメが入っていていいと思います。

グリップは硬質のエラストマー素材でできています。基本的には硬いですが、ABSのような樹脂と比べると柔らかさを感じる素材になっています。グリップ部の太さは約11 mmです。細すぎず太すぎず、いいバランスの太さだと思います。

キャップを外した状態で重心はグリップの後端より少し上にあります。すごく低重心というわけではないですが、バランスの良い重心位置だと思います。よく計算されていると思います。

クリップは艶消しの塗装が施されていて、強さは適切です。

天冠や消しゴムカバーのところにはシルバーのアクセントがあり、デザインが単調にならないように工夫されています。カジュアルさを保ったまま、程よい高級感を感じさせる仕上がりになっていると思います。欲を言えば、天冠と消しゴムカバーは塗装した金属でもよかった気がしますが、この部分は落としたりした時に強い力を受ける可能性が高い部分なので、塗装をしているとハゲる可能性があります。また、樹脂にすることでぶつかった際の衝撃を吸収するような効果も期待できます。安っぽくならないように、表面に細かいシボ加工を施したり、意匠性を持たせたりしてはいますので、これはこれでよしとしましょう。

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キャップはマグネット式になっていて、尻軸側にもマグネットで固定できるようになっています。

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初期芯繰出機構が実装されていて、キャップを外すと常に一定度の芯が出ている状態になっています。クルトガダイブはボールチャックが用いられているため、パイプを強制的に出し入れすると芯が繰り出すような性質があります。キャップ内部にパイプに当たる部分を設けておくことでこのようなギミックが成立します。芯が2.5 mm以上出ている状態ではキャップをしないようにと取扱説明書に書いてありました。

さて、全体的なフォルムを再度見て見ましょう。

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一緒に並べてあるのはクルトガアドバンスアップグレードモデルです。クルトガダイブのデザインは基本的にアドバンスアップグレードモデルを踏襲しています。アドバンスアップグレードモデルの重量は16 gなので、上の写真の状態ではクルトガダイブの方が2 g軽いです。

基本的にはクルトガなのでクルトガ独特のペン先の沈み込みはあります。しかし、私的にはこれはこれまでのクルトガとは別物という印象です。購入前から期待していたのですが、ほぼ予想通りの結果でした。下の写真を見てください。

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左がアドバンスアップグレードモデル、右がダイブです。アドバンスアップグレードモデルはパイプを保持している樹脂が動きます。つまり、矢印の部分から先が軸内部に沈み込みます。一方、ダイブはパイプだけが動きます。

少し前に書きましたが、私はクルトガの芯の浮き沈みする挙動よりも、動く時に口金と擦れているようなコリッとした感じがたまに生じるのが苦手でした。ここ数日、ダイブのためにクルトガばかり使っていたので、だいぶ慣れましたが。ダイブは細いパイプだけが浮き沈みするので口金と干渉する面積が小さいです。そのおかげで私が苦手だった挙動がほぼありません。また、アルファゲルスイッチで特に気になっていた、ペン先のカチカチするような感じもほとんどありません。

クルトガが動く荷重を簡易的に調べてみるとダイブでは90~100gf程度、アドバンスアップグレードモデルでは40~50 gf程度でした。クルトガエンジンの出力を上げるため、若干、重めになっているのかもしれません。筆圧が小さい場合にはエンジンが動かない可能性もありますが、一般的な筆圧を考えると十分にクルトがエンジンは駆動すると思います。

クルトガエンジンがペン先から離れているせいか、クルトガ独特のカチャカチャした感じが伝わりにくく、全体的な印象としてはしなやかな書き味になっています。筆記感はこれまでのクルトガシリーズとは全然違うと、私は感じます。クルトガが好きなのに、筆記感が苦手でこれまであまり使ってきませんでしたが、これなら使えます。もちろん、このようなギミックのないシャープペンシルの方が書き味はいいです。ダイブだから書き味最高!とかそういうのではありません。

実際に、ある程度書いてみました。

まず、減速比に関してですが、理論的には1:11ですが、実際の挙動は異なりました。

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上はパイプが伸びてから再び伸びるまでの筆記の様子です。1行100画で書いてあります。

上は普通に書いた時、下はちょっと筆圧を意識して書いた時です。理論的には440画でワンサイクルなのですが、実際は600サイクルと500サイクルでした。これは筆圧が足りずにクルトガエンジンが回っていなかったり、サブエンジン?に駆動力が伝わらないのが原因だと思います。これに関しては原理上あり得ることなので、そんなもんだと思うのがいいと思います。

500ないしは600画に1回、パイプがニョキッと飛び出すのですが、普通に書いていたらよくわかりません。もちろん、気をつけていれば、あ、いま動いたなってわかりますが、無意識に書いていたらほとんど気がつきません。MIDしか試していませんが、ガイドパイプが伸びたり縮んだりした時の長さの変化もほぼ気になりません。というか、意識していなかったらよくわかりません。筆記をやめて、パイプの長さを確認してはじめてわかるレベルです。

芯出し挙動は本当によく計算して設計してあると思います。

ただし、芯の柔らかさや紙によっては調整が必要な場合があるということもわかりました。

はじめはルーズリーフに試し書きをしたのですが、続いてコピー用紙に取説を書き写す作業をしてみました。

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コピー用紙はルーズリーフよりも紙面が粗いため、芯がよく減るようです。しばらく書いていると上のように芯がなくなりました。ただし、ダイブのすごいのは、この状態でも書き続けることができます。この状態で書くとどうなるかというと、まんま、オレンズネロと一緒です。上の字をよくみるとパイプが紙面に当たった様子がわかると思います。筆圧がパイプ側に逃げるので若干線が薄くなりますが、このまま書き続けることが可能です。

昨日の考察でもわかるように、この状態でパイプが伸びても芯がノックされるわけではないです。パイプが伸びても相変わらず芯は出ていません。下の写真がその状態です。

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しかしながら、パイプは待機時間が来るまで一定の速度(それは通常の芯のすり減る速度より速いと思われる)でパイプが後退していきます。そうすると芯が露出します。下の写真がその様子がよくわかります。

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1行目は芯が飛び出していない状態、つまりオレンズネロと同じモードで書いています。パイプと紙面の摩擦はそれほど気になりませんが、筆記線は掠れ気味です。2行目あたりから芯が繰り出してきているのがわかります。3行目になると完全に芯が露出して普通に書けています。上の写真はルーズリーフ+MIDでの挙動です。コピー用紙の場合、芯の減りが早いのでMAX寄りにしないといけないと思います。

以上がファーストインプレッションです。

最初に結論を書きましたが、ダイブは想像以上に完成度が高いクルトガになっていると感じました。5500円という価格はシャープペンシルとしては高いですが、十分にその価値はあると思います。予備としてもう一本欲しいくらいです。

普及品もしくはカラーバリエーションを増やして通常モデルとして販売することを強く希望します。

私は限定品は基本的に使わずに保存用の引き出しに入れてしまうことが多いのですが、クルトガダイブに関しては、日常使いしたいと思います。

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